「すべての女性に生殖補助医療(PMA)を」。これが法律として成立すれば、多くのレズビアンや独身女性の人生が変わる。LGBTの権利のために闘ってきた協会の責任者や当事者となる女性たちに、話をきいてみた。
「女性だけではなく、トランスにもPMAの権利を」
建物に大きなレインボーの印。年間2万人以上の訪問者に情報を提供したり、LGBT運動のグループ設立の手ほどきもするこのセンターでは、世代も人種もジェンダーも多様な人たちとすれ違う。センターの活動の多様さをも示しているようだ。エイズ撲滅や権利要求などの目的のもとに、夢と団結心を持った50ほどのゲイ・レズビアン団体が1993年集結しセンターを作った。今ではどんなLGBT運動であれ、このセンターなしには考えられない。共同代表のカーヌさんに、今審議中の生命倫理法について聞いた。
「PMAが全ての女性に認められたら素晴らしい。でも、出生届に〈PMAで誕生〉とは記入しないまでも 〈ふたりの母親から生まれた〉と記入できたら同じことです。男女のカップルと同じ手続きでPMAができ、女性カップルだけが心理テストを受ける義務などなく親になれるよう望みます。そして、PMAの権利をトランスジェンダーにも認めて欲しいというのがセンターの立場です。
私たちが要求してきた、PMAで生まれた子どもが18歳になったらドナーの身元情報を知る権利も認められる見通しで嬉しいです。他の点では、血縁がなくても親と子どもが似たような性質を持てるよう、ドナーのタイプを選んで精子提供を受けることができます。例えば私なら肌の黒い人から提供を受ける、というように。その際、自分が利用する病院で適当なドナーがいない場合でも、センター間の情報共有で速やかに適当なドナーが見つかるようになればいいと思います」。
www.centrelgbtparis.org/
「私には母親がふたりいます」
今まで多くの女性がベルギーやスペインに行って子どもを産んできた。アンヌ=リーズさんはベルギーで生まれた。PMAについて議論するときは私たちのような当事者の意見を聞いてほしい。同性婚の時のような低俗な議論に陥らないことを望みます、とビデオで語っている。
レズビアンの存在の薄さは、経済的格差も。
ci Bar de Filles 経営者 ドロンさん
シャトレ広場のすぐそばに1年前にオープンした„Ici Bar de Filles”経営者ドロンさんは水商売20年。自分の店を開くのは長年のプロジェクトだった。ダーツを置き、シャイな女子たちのために「郵便配達人がラブレターを想いの人に配達」ゲームの日、シニアレズビアンのための 「Senioritaの夕べ」なども設けている。
「同性婚と同時にPMAも合法化するべきでした、結婚と直結することですから。私は女性のパートナーの子どもを養子にして母親になろうと思いましたが、それができずに諦めました」。レズビアンバーはゲイバーに比べると少なく、パリで7、8軒だ。「女性はカップル生活になると出かけなくなる。家庭内で過ごすのが好きなこともあるでしょうが、ゲイと比べると相対的に収入や社会的ポジションが低いことも影響します。社会全体の男女の格差はLGBTのなかでも同じ」。若い頃通ったバーのパトロンヌ(女主人)たちがそうだったように、客とコミュニケートして、暖かい楽しいバーを心がけているそうだ。
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人生設計ができるようになる。
サンドラさん
PMAが女性カップルに認められるようになれば「他の人と同じような権利」が得られる重要な変化。誰を好きになっても、その人と人生設計ができるようになります。結婚は単に愛の約束ではなく、家を買う、家庭を築く、バカンス…生活の全てです。パートナーがPMAで産んでくれるなら家庭を築きたい。カミングアウトしたばかり。外見もレズっぽいですが、いやがらせは受けません。いやがらせは知らないものに対して人が抱く「おそれ」が原因。学校だけではなく大人への啓発が大切だと思います。最近は、LGBTの間での小競り合いも気になりますね。
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バーデビューは母親と。
マルゴさん
17歳で初めてルーアンで唯一のレズビアンバーへ。カミングアウトしたら、母が連れて行ってくれたんです。母はモテモテでした。パリで法律の勉強を始めて保守的なアサスのキャンパスで初のLGBT協会を結成!と思いきや、ポスターに書いた携帯番号に脅迫電話が来たり、学長から呼び出され、「ここにはそんな人はいない」と言われ…諦めました。パリに上京したけどバーの敷居が高く感じて何回も前を通り過ぎたりしました。入っても、その晩落ち込んで丸坊主にしたり。今33歳。夢は子どもを産むことです。
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自分の「あり方」でいられるといい。
ダダ(左)&ステイシー(右)さん
[ステイシー]看護師です。ふたりでバーに来るのは月に一回程度ですが、よそでは手をつないだりキスしたりしないようにしています。ジロジロ見られるし。同僚たちもオープンで職場では特に問題はないですよ。
[ダダ]私は男っぽいからステイシーより町で冷やかされることが多いかな。バーではいろんな人が自分なりの「あり方」で自由にしていてラク。同性の結婚やPMAは、いいことだと思う。