
昨年、第2次大戦後初めて死亡者数が出生児数を上回ったとフランス統計経済研究所(INSEE)が発表したことを受けて、少子化対策についての議論が高まっている。
INSEEは1月13日、2025年の死亡者数を65万1000人、出生児数を64万5000人(いずれも暫定値)とする統計を発表。フランスでは戦後初めて死亡者数が出生数を上回り、人口が自然減に転じた。ただし、移民増のため人口は0.25%増の6910万人となった。出生児数は戦後最低で、前年比2.1%減、2011年比では23.6%減にもなる。INSEEは人口の自然減に加え、人口に占める高齢者の割合の増加により、介護、家族政策、雇用、移民の必要性などが今後の課題になるとした。一人の女性が生涯に産む子の数で示される「合計特殊出生率」は、フランスは2000年以降でも2019年頃まで常に1.8人~2人を保って欧州の優等生と言われたが、その後は急速な下降を続け、2025年は1.56人(暫定)にまで落ち込んだ。ただし、欧州も全体的に出生率が下がっているから、フランスは今でもブルガリアに次いで欧州第2位だ。
こうしたことから、少子化の原因と対策についての議論が高まっている。2025年7月に公表された国立人口研究所の調査によると、仏人が望む子の数は1998年の2.7人から2.3人に減ったという。一方で、全国家族団体連合(UNAF)などは国民の子どもを持ちたい思いは変わっていないが、住居や経済的問題、託児制度などの物理的な理由が原因であり、政府がその問題を解決して支援すべきだと主張する。
マクロン大統領「人工再軍備」作戦
2024年1月、出生数の減少を受けて、マクロン大統領は「人口の再軍備 réarmement démographique 」を唱え、不妊撲滅計画や出産休暇増加の考えを示した。さらに与党のオリゾン党などの呼びかけで「出生率低下の原因と影響についての国会調査委員会」が昨年7月に設置され、この2月11日に報告書が公表された。
報告書の主な目的は、子どもがほしいのに経済的理由であきらめる国民を住宅、出産育児休暇、託児施設、私生活と職業生活のバランス向上、支援金などにより支援することで、具体的には、所得制限なしに一人目の子から(現行は2人目から)一律月250€の家族手当を子が20歳になるまで支給すること、子の誕生に合わせて住居を購入する親には住宅ローンの無利子化などを提案している。すでに今年度の社会保障予算に親一人につき最高2ヵ月の出産休暇が盛り込まれ、7月から実施されるが、報告書では、子どもが幼稚園に入る3歳まで、最初の12ヵ月間は給与に応じた額が支給され、その後の2年は漸減する定額手当を出すことを提案している。それとは別に、約300万人が不妊症に悩んでいることから、政府は29歳の全国民に不妊症問題を周知させ受診を促す手紙を夏頃に送ることを検討していると仏紙は報じる。
しかし、果たして経済的な問題や不妊症だけが少子化の主な原因なのだろうか? 気候問題、国際情勢、環境問題などから生じる漠然とした将来への不安や、自分の生き方に関する個人的な選択肢である可能性もあるだろう。反対に、少子化は失業者を減らし、住宅難を軽減し、教育の質を上げることができるという意見すらある。世界的な人口増加、地球温暖化、環境問題などにより、政府が昔ながらの出生主義を無邪気に推進していいのかという疑問を抱く人もいるだろう。(し)
