タイトルを見て「下品なティーンムービーに違いない」と躊躇する人もいるだろうか。いや、これが意外に秀作なので、食わず嫌いにならずに見てほしい。
英国人女子高生のタラ(ミア・マッケンナ=ブルース)は、友人2人と卒業旅行でクレタ島にやって来る。町全体が彼女たちと同じ若者であふれ、まさにナンパ天国。芋洗い状態のプールやディスコでは、セクシーな若者たちがじゃれ合っている。
タラはグループの中でただ一人男性経験がない。派手な洋服に身を包んでも、中身はいたって普通の女の子だ。できれば素敵な男の子に出会って、良い思い出も作りたい。だが、ドラマはそう簡単には進まない。なぜなら性的な関係には、イエスとノーの間のグレーゾーンもあるから。相手の微妙な言葉や態度ひとつで、その場の雰囲気や気分は変わる。相手が自分を尊重しているか否かは、決定的な問題だろう。特に初めての場合は……。
カンヌ映画祭「ある視点」部門は数年前にマイナーチェンジし、2作目くらいまでの若手監督に積極的に門戸を開くように。「性的同意の問題」について焦点を当てた本作は、この部門で今年の最高賞を獲得した。監督は長編第1作となる英国人マリー・マニング・ウォーカー。最近日本では首相の無思慮な発言のせいで、「女性ならではの感性」などと言うと、たちまち地雷を踏みそうである。とはいえ「性的同意」をテーマにしようと考えるのは、女性監督でもないとなかなか思いつかない新鮮な切り口ではないだろうか。まだまだ映画も未開拓のテーマが残されているのだろう。ここには誰もが通る若さの苦味が描かれている。しかし、映画の後味は予想外に爽やかだ。思い通りにいかない青春時代への優しいレクイエムのようでもある。(瑞)