6月6~9日に各加盟国で欧州議会議員選挙(定員720人)が行われた。9日に投開票したフランスでは、極右の国民連合(RN)が与党連合の倍以上の31.5%の得票率で30議席を獲得。これを受けてマクロン大統領は同日夜、国民議会を解散し、6月30日、7月7日に総選挙を行うと発表した。
極右が37%の歴史的スコア。
フランスの割当議席数は81。内務省やメディアによると、RNが31.5%で30議席と、現在の23議席から大きく議席数を伸ばした。続いて与党連合が14.6%、13議席と現在の23議席から大きく後退、社会党は好スコアの13.8%で13議席、「服従しないフランス」党(LFI)は9.9%で9議席、右派の共和党は7.2%で6議席、ヨーロッパ・エコロジー=緑の党(EELV)は5.5%で5議席、マリオン・マレシャル氏が筆頭候補となったもう一つの極右「再征服」(Reconquête)党が5.5%で5議席となった。極右2党を合わせると35議席となり、仏の4割強の勢力を占めることになる。欧州全体では現在の中道右派「欧州人民党グループ」が最大勢力を維持すると予想されているが、全体的に右派や極右が勢力を伸ばした。
議会解散と総選挙。
マクロン大統領は9日夜、与党連合がRNの半分のスコアしか獲得できなかったことを重く見て、「投票によって将来の議会についての選択を国民に委ねる」とし、国民議会の解散と総選挙実施を発表した。この欧州選直後の突然の議会解散宣言に与野党両陣営は一様に衝撃を受けた模様だ。ルイ・アリオRN副党首は総選挙で過半数を獲得し、欧州選のRNリストを率いたジョルダン・バルデラ党首を首相に就任させると意気込む一方で、社会党、LFI、EELVといった左派諸党は各リーダーがそろって総選挙での左派連合の必要性を訴えた。前回欧州選の6.19%から今回は13.8%と躍進した社会党のフォール第一書記は「(今回の選挙で)力関係が変化した」としており、早くも総選挙の左派連合のレーダーシップを巡る駆け引きが始まっている。LFIは欧州選で左派連合を組むことを拒否した社会党、EELV、共産党を批判しながらも、リュファン氏などは「今の課題は、わが国に起きるかもしれない最悪の事態を直視すること」と危機感を募らす発言をしている。
仏極右の大躍進と与党連合の低迷。しかも、左派諸党の得票率を合わせても極右2党の合計37%に及ばないというゆゆしき事態だ。もしEU内の大国であるフランスが極右に政権を取られることになれば、仏国内政治はもちろん、EUの国際舞台における位置づけや政策にも大きな影響を及ぼすことになるだろう。(し)