
欧州連合(EU)のカッラス外交安全保障上級代表は5月20日、1995年のEU=イスラエル間の政治協力と自由貿易の合意に定められた人権尊重条項の同国の順守についてEU委員会が審査すると発表した。イスラエルのガザ攻撃激化や人道支援妨害に批判の声が高まっている。
イスラエルは2ヵ月続いた停戦を3月18日に破って攻勢を強めている上、3月2日から人道支援の搬入をほぼ阻止しており、ガザでは深刻な食料不足・医療危機が起きている。イ政府は5月5日にはガザの全面占拠、同地市民の強制移動の方針を決定した。
こうした情勢を受け、仏、英、カナダの元首は19日、「イスラエルの軍事作戦の拡大に強く反対する。ガザ市民の苦痛は許容できないレベルに達した」とイ政府を非難する共同声明を発表し、攻撃の停止と人道支援の再開を求めた。また 「二国家解決」のためのパレスチナ国家承認の決意を表明した。これまで独、伊、オーストリア、チェコ、ハンガリーなどはイスラエルに対する無条件の支持を示してきたが、西、アイルランド両首脳が昨年から求めていた、EU=イスラエル間の合意の「人権尊重と民主主義原則」条項の審査に最近になって仏、ベルギー、オーストリア、ポーランドなどが加わり計17ヵ国が賛成。もしイ政府が同条項に違反していると判断されれば、同合意の停止あるいは凍結になる可能性もある。政治的協力については全加盟国の賛成が必要だが、貿易に関しては多数決で諸措置を決定できる。
仏国内でもイ政府批判が高まっている。政府はこれまでイスラエル寄りの姿勢をとってきたが、マクロン大統領は4月上旬のエジプト訪問直後には「ネタニヤフ首相がやっていることは犯罪だ」と発言。今月13日にも「いまイ政府がやっていることは受け入れられないと断言する」とした。ユダヤ教の指導者である女性ラビ、デルフィーヌ・オルヴィラール師は自身の主催する雑誌8日付で、イスラエル政府の「倫理的破綻」を指摘し、これまで沈黙していたが、イスラエルのために発言することが喫緊と説明。漫画家ジョアン・スファール氏も今起きていることに声を上げるべき、などとユダヤ系有名人の声も次々と上がっている。
21日にはヨルダン川西岸のジェニン難民キャンプ近くで欧米、露、トルコなど多数の国々の外交団にイ軍が警告のために実弾を発射した事件も国際的な批判の的になった。イ政府はいつまで国際世論の声を無視し続けるのだろうか?(し)
