『Bangkok Nites』邦画のスケールをはるかに凌駕。 2017-11-15 舞台・映画 0 数年前、『サウダーヂ』という映画に衝撃を受けた。そこには私の知らない日本が、予想だにしなかった日本が描き出されていた。過疎化した山梨県甲府市周辺、シャッター通り、そこに生きる若者たち、ブラジルや東南アジアからの移民たち、鬱屈(うっくつ)するエネルギー、彼らの、いや21世紀の今日を [...]
優しく残酷、幻想的で現実的。『Corps et Âme』 2017-11-02 舞台・映画 0 『Corps et Âme』 雪化粧した森の奥深く、二頭の鹿が大地に立つ。それは夢のように美しい風景。だが実際、これは夢なのだ。見とれていると、非情にも人間界の映像に切り替わる。主人公はふたりの男女。食肉加工工場ディレクターのエンドレと、品質管理担当者のマリア。ふたりはある事 [...]
芯があって素直な主人公が成長する姿に、共感がわく。 2017-10-18 舞台・映画 0 『 Tous les rêves du monde 』 今を去ること20余年前『 Les gens normaux n'ont rien d'exceptionnel/おせっかいな天使 』という映画との出会いは、筆者の個人映画史になにがしかを刻んだ。 [...]
Kein Licht「光のない。」ポスト・フクシマのオペラ。 2017-10-13 舞台・映画音楽 0 10月18日(水)〜22日(日) ノーベル文学賞作家、エルフリーデ・イェリネクが福島の原発事故後に書いた戯曲「KeinLicht-光のない。」をフィリップ・マヌリがオペラ化(厳密にはオペラではなくマヌリが提唱する新ジャンル "Thinkspiel")。生楽器/電子音楽、セリ [...]
『Téhéran Tabou』実写で撮影不可能なイランの暗部 2017-10-03 舞台・映画 0 『 Téhéran Tabou 』 イスラエル人アリ・フォルマン監督の『戦場でワルツを』(08)を覚えているだろうか。「アニメのドキュメンタリー」という野心的な試みに驚いた人も多かろう。先のカンヌ映画祭批評家週間で紹介された『Téhéran Tabou』もまた、アニメの可能性 [...]
Miranda – Opéra シェイクスピアの女主人公、現代に現る。 2017-09-18 舞台・映画 0 9月25日(月)〜10月5日(木) 英国の演出家ケイティ・ミッチェルはシェイクスピアの父権社会と女性の扱い方に疑問を抱き、『嵐』のなかで父プロスペロの思惑によりナポリの王子と結婚させられた娘ミランダを、現代のフィルターを通して描き直し、ピグマリオン楽団演奏のパーセルの音楽でオペラ [...]
シンプルな物語から、内省的な人間ドラマを映像に刻印。 2017-09-18 舞台・映画 0 『 Faute d'amour 』 03年、『 父、帰る / Le Retour 』でヴェネチア国際映画祭で金獅子賞と新人監督賞を獲得し、彗星のように世界の映画シーンにデビュー。つづく 『ヴェラの祈り / Le Bannissement』(07)でカンヌ男優賞(妻の不貞に揺ら [...]
かたくなな心溶かす無垢な魂。『 夜明け告げるルーのうた』 2017-09-07 舞台・映画 0 『Lou et l’île aux sirènes - 夜明け告げるルーのうた』 世の中には「好き」とか「愛してる」なんて言葉を、事もなげに言える人もいるらしい。でも大事な人に愛の言葉を伝えるのは、なんて難しいことだろう。そんなことを思ったことのある人にぜひ見てほし [...]
広島を舞台にした、ペリオ監督初の長編フィクション。 2017-08-14 舞台・映画 0 『Lumières d’été なつのひかり』 在仏20年のアキヒロ(大木ひろと)は広島に一時帰国している。フランスのテレビ用に、原爆投下70周年に関するドキュメンタリー番組を撮影中なのだ。目の前に座る年配の女性は、14歳だった当時の被曝体験を語りだ [...]
『ÉTÉ 93』『ポネット』に連なる新しい児童映画の秀作。 2017-08-07 舞台・映画 0 荷物がまとめられたバルセロナのアパート。6歳の少女フリーダは、促されるまま家を出た。走り出す車を追いかける友だちを、冷めた目で眺める。行く先は森に囲まれたカタルーニャの家。養子として引き取られるのだ。 カメラは子供目線で、新生活を始める少女に寄り添う。時は1993年。まだエイ [...]