『Eva』イザベル・ユペール、究極のファム・ファタル。

© 2017 MACASSAR PRODUCTIONS – EUROPACORP – ARTE France CINEMA –
NJJ ENTERTAINMENT – SCOPE PICTURES / Guy Ferrandis

 老作家が戯曲を残し急死した。ベルトランは作者に成りすまし成功をつかむ。彼が次作の執筆のため向かうのは、アヌシーの雪深き山小屋。ここで出会うのが高級娼婦エヴァ。謎めく女は若き“偽作家”に、創作のインスピレーションを与えるだろう。

第68回ベルリン映画祭コンペティション部門に出品されたブノワ・ジャコーの『Eva』。原作は英国人推理作家J・H・チェイスのサスペンス小説。ジャコー監督が13歳の時に読み衝撃を受け、監督を志すきっかけになった作品だという。この原作は、半世紀以上も前にジョセフ・ロージーが『エヴァの匂い』として映画化済み。男を破滅に導くエヴァを、ジャンヌ・モローが官能的に演じ、「ファム・ファタル(運命の女)」のイメージを決定付けた。本作ではジャコー作品に6度目の出演となるイザベル・ユペールが、新生エヴァに命を吹き込む。

今回のエヴァはわかりやすい誘惑者ではない。ベルトランの母親と言ってもよいほど年も離れている。だが艶やかなウィッグが似合うユペールは、堂に入ったファム・ファタルぶり。男たちをやすやすと手玉に取る。記者会見では「脱がないのにセックスアピールがある」と評された彼女が、「あなたはエロティックをわかってない」と一蹴する場面もあった。

また本作は男も負けていない。男女のパワーゲームは見どころのひとつだ。ベルトランに扮するギャスパー・ウリエルは、ふたりの関係を「鏡的な効果がある」、「向き合うことで緊張が高まり、永続的に脅しが続く印象を与える」と表現。挑発しながら惹かれ合う。互いに秘密を抱えた二人は、似た者同士にさえ見える。まるで疑問符のような奇妙な愛の形だ。大人の心理サスペンスは3月7日から劇場公開。(瑞)