『La Prière』祈りの力、真っ直ぐに見つめる。

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『La Prière』

 「La Prière 祈り」という直球のタイトル。無神論者なら、一瞬ひるむだろうか。しかし、信仰心を持たぬ、ごく普通の人にこそ見てほしい。信仰を美化せず、貶(おとし)めもしない。観察者として、判断はくださずに踏みとどまる、慎み深い人間ドラマだ。

 雄大な稜線が広がるローヌ=アルプ地域圏。走る車に揺られる、訝(いぶか)しげな眼差しの青年トマ(アントニー・バジョン)。童顔の顔はなぜか傷だらけだ。到着するのは、山間のカトリック系依存症回復施設。アルコールやドラッグの依存症の若者が、信仰の力を借りながら、社会復帰を目指す場所である。すぐにトマは髪を切られ、祈りと労働の集団生活に入る。だが信仰心のない青年は、急になじめるわけでもない。ある時、隠れてタバコを吸ったことから脱走をはかり…。

セドリック・カーン監督。

監督は中堅の実力派セドリック・カーン。無駄をそぎ落として、人間に肉薄するような乾いた演出が彼の真骨頂だが、本作もその系譜を継ぐ。信仰のある者・ない者の双方を尊重しながらも、現代における「祈りの力」を真っ直ぐに見つめる。人は信じているから祈るのか?あるいは、祈るから信仰心が生まれるのか?

ドイツの鬼才ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーが好きな映画ファンなら、シスター役で登場する女優ハンナ・シグラの登場は感涙もの。『マリア・ブラウンの結婚』『リリー・マルレーン』などで知られるシグラは、やはりただのヤワなシスターとしては登場しない。

トマ役のバジョンは、この先の俳優人生が楽しみな23歳。先のベルリン映画祭では、本作で主演男優賞を受賞し、話題をさらった。受賞時の記者会見では、「この賞をもらうため、僕はたくさん祈りました」とコメント。祈る者に、世界は微笑む?(瑞)

この作品でベルリン映画祭・主演男優賞に輝いたアントニー・バジョン、23歳。

ハンナ・シグラも登場。