イリフネ社の前社長ベルナール・ベロー(1942-2020)は、小沢君江とともに1974年に有料の「いりふね・でふね」を創刊。今は亡き堀内誠一氏のバックアップと素敵なレイアウトで熱心な愛読者がついたが、せっかく支払っていただいた料金の回収が難しいなどの理由で終刊となり、1979年に無料のパリ情報誌「オヴニー」が誕生する。
1983年にベルナールから編集を担当してくれないかと頼まれ引き受けたのは、スタッフを一緒に仕事する仲間としてみてくれる彼の姿勢を信頼していたからだ。ベルナールは当時のエスパス・ジャポンで、日本のカレンダー、藍染、おりがみ、食堂メニューのろう細工見本などの展覧会を次から次へと企画し、日本の「ふつう」の文化を知ってもらおうと努めていた。
ぼくもベルナールにならい、オヴニー誌では、パリという異国の町でライターたちが不思議に思ったり、おもしろく思ったり、好きになったりしたことを読者と分かち合う、大文字ではない小文字の街角の文化の紹介を志す。幸いなことに稲葉宏爾氏など素晴らしいコラボレーターに恵まれ、助けられ、2014年までオヴニー制作に楽しく携わることができた。
人は出会い、心を通わせ合い、いつか別れることになる。ベルナールに、古代ローマの大詩人ホラティウスの「Non omnis moriar(私のすべてがなくなってはしまわない)」というコトバを贈りたい。
メルシー、ベルナール!
佐藤 真(オヴニー前編集長)