シャンソン歌手、バルバラの数々の歌には彼女の生きた軌跡が息づいている。数回にわたり、バルバラの自伝*をたよりに、そんな歌のいくつかに光をあててみたい。
バルバラ (本名 モニック・アンドレ・セール)は、1930年、パリ17区のユダヤ人家庭に生まれる。第二次世界大戦が勃発した39年から45年にかけては、戦火を逃れ、ゲシュタポをおそれながら、ポワチエ、プレオー(小村)、タルブ、グルノーブルと各地を転々とし、43年7月から終戦まではサン・マルスランに住む。22年後、ツアーの途中でこの町に立ち寄ったバルバラに、13歳から15歳にかけての辛い思い出がよみがえり、『Mon Enfance』という名曲の作詞作曲のきっかけとなる。(真)
「 Oh les noix fraîches de septembre
Et l’odeur des mûres écrasées
C’est fou, tout, j’ai tout retrouvé
Hélas (…)Pourquoi suis-je venue ici,
où mon passé me crucifie et ne dort jamais mon enfance?
おお、9月の新鮮なクルミ、踏みつぶされたブラックベリーの匂い、信じられないくらいにみんなあったわ。だけど (…)なぜここにもどってきたのかしら。過去が私をはりつけにし、子ども時代が決して眠ることのないこの町に?(拙訳)」