★★★★ Mégumi Satsu
フランスに在住していたシャンソン歌手、薩めぐみが10月に他界した。昨年リリースしたアルバム『Après ma mort』は、彼女がファンに遺した鎮魂歌。最初の曲『Bornéo nouba』では、東洋的なアレンジが冴え、薩めぐみ独特の低声と傑出したボーカルが聴けるが、他の新曲と異なった響きがあり、彼女の最後の録音曲かと思われる。『Tu viens dans mon bordel』は、スローバラードの美しい曲。ジャン・ボ−ドリヤ−ル作詩『Lifting Zodiacal』や、フレデリック・ミッテラン作詩『Jetlag dans mon enfer』のほか、表題曲を英語でも歌い、このアルバムでも彼女の強烈な個性のひらめきが感じられる。また過去に発売されたアルバムの多くが、プレヴェールやトポールなどの詩に曲をつけ彼女なりの解釈で歌ったオリジナル。これだけでも他のシャンソン歌手たちと一線を画す希有な才能と分かる、フランスのシャンソン界でも二度と現われることのない余りにも個性的なアーティストだった。(南)