何度か来日もし、日本にもファンが多いフランスを代表するアコーデオニスト、リシャール・ガリアノ(59)が、最近ドイツ・グランフォン社から協奏曲を中心にしたバッハ作品集を出した。アコーデオンは、ワルツやジャヴァ、タンゴなどバル・ミュゼットと呼ばれる庶民のダンス音楽に欠かせない楽器。また「貧乏人のピアノ」という蔑称(べっしょう)もある。「もう50年前くらいからアコーデオンでバッハは弾かれているんです」とガリアノはどこまでも楽譜に忠実にクラシックのバイブルを弾き通す。「アコーデオンに対する差別主義に終止符を打ちたかったんだ。(…)音楽家やクラシック音楽好きにも語りかけるような、そしてみんなが踊りたくなるような真面目なポピュラー音楽」と自分の演奏を定義する。
1950年カンヌ生まれ。父がアコーデオン弾きで、4歳からアコーデオンに親しむ。13歳の時に祖母がヴィクトリアという本格的な楽器をプレゼントしてくれる。20歳の時にパリにのぼり、今は亡き名歌手クロード・ヌガロやバルバラの伴奏をつとめる。「彼らともっといろんな仕事ができなかったことが何よりも悔やまれる。若すぎたし臆病すぎたんです」。ピアソラの演奏を聴いて開眼、新しいバル・ミュゼットを目指す。ペトルチアーニ、ロン・カーターなどとも共演し、これまでに出したアルバムは40枚以上! そして年200回近いコンサートをこなすが、自分の演奏に対して厳しいせいか、今でも舞台に向かって廊下を歩いて行く時、「処刑前の死刑囚、闘牛開始前の闘牛」のような気持ちに陥るという。(真)
写真:Deutsche Grammophon。19€。