妊娠38週を超えたらいつ生まれてもおかしくない。担当の助産婦にそう言われてドキドキしてたある週末の朝。下腹部にズーンと重い痛みを感じて目が覚める。出産の兆候かもしれないと、はっとし、横でグースカいびきをかく彼をたたき起こす。ちょっとあたふたするも、陣痛が起きた際の「To doリスト」のおかげで落ち着きを取り戻す。病院に連絡を入れると、初産だし陣痛はまだ15分おきだから、5分おきになったら来て下さい、と言われ、熱めのお風呂につかり、たっぷり朝食をとった。ママバックも再度チェックし、仕事関係のメールを数通書き終えるころには5分間隔になった。3時間前とは痛みもがく然と違う。タクシーを呼んですぐに病院へ。
待合室にはたくさんの未来のママ&パパたちが病室が空くのを今か今かと待っている。私の横ではすでに最終フェーズにいる女性が時々雄たけびを上げる。数時間後の自分の姿と想像すると気になって仕方ない。名前を呼ばれ診察室で内診を受け、おなかに心拍モニターを付ける。子宮口もいい感じに開いてるらしく、この調子ならあと2、3時間でしょうと言われ、武者震い。すぐに無痛麻酔が欲しいかと聞かれたが、ぎりぎりまで待ちたいと断った。その後、すぐに短い間隔で腰が割れるように痛くなり、断ったことを軽く後悔。苦しむ私を見かね、助産婦を探しにいった彼が戻ってきて、麻酔医が勤務交代してしまうから打つなら今らしい、とのこと。なんともフランスらしい。お騒がせした無痛麻酔注射の後、嘘のように痛みがすーっとひいた。雲ひとつないよく晴れた午後。陣痛に耐えた疲れと太陽のまぶしさで頭がボーっとしてる。ね、眠い…。ウトウトしかけたその時、さぁ行きましょうと、手を引かれ分娩台へあがる。まな板の上のコイ状態で数回いきんでみると、おめでとう~の声とともにおなかの上にべべがのせられ、あっけに取られる。一生懸命泣いて真っ赤なわが子。9カ月間よく頑張ったね、これからよろしく、と頬にビズした。(凛)