夏をパリで過ごすなら、冷房の効いた映画館でクラシックを統計的に観るというのも一案か。今夏はイタリアの旧作リバイバルが目立つ(DVDリリースの前宣伝?)。ロッセリーニ、ヴィスコンティ、フェリーニ、アントニオーニ、パゾリーニといった巨匠たちの名作のみならず、イタリア映画は、戦後すぐのネオレアリズモから60~70年代に連発された辛らつ喜劇まで隆盛を極めた。中でもソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニのコンビが演じたイタリア的カップルは世界的な人気を博す。その代表作の1本『昨日・今日・明日 Hier, aujourd’hui, demain』は、主演の二人に加えて、監督がヴィットリオ・デ・シーカ、製作がカルロ・ポンティで、アカデミー外国語映画賞受賞作という象徴的な一本だ。ナポリ、ミラノ、ローマの3都市を舞台に二人がイタリア的カップルの3パターンを演じ分ける。とりわけナポリ編は、庶民のバイタリティーが溢れかえり、慎ましい幸福感に満たされる珠玉の一編。
ピエトロ・ジェルミ監督『イタリア式離婚狂想曲 Divorce à l’italienne』では、女の尻に敷かれがちなマストロヤンニが反撃に出る。ここでの彼の恋の相手は、無垢なる色気を放つステファニア・サンドレッリだ。ローレン単独主演の『二人の女 La Ciociara』(デシーカ監督、ポンティ製作)は、戦争を背景にしたシリアス・ドラマ。同作品でローレンは英語以外の映画で初のアカデミー主演女優賞を獲得。
辛らつ喜劇ものでは、日本未公開のエットーレ・スコーラ監督『Affreux Sales et Mechants (醜い奴、汚い奴、悪い奴)』がおすすめ。そして最後は、スコーラ監督による黄金コンビの最後の共演作『特別な一日 Une journée particulière』で締めよう。(吉)
*いずれの作品もパリで公開中です。