●Oumou sangare “Seya”
暑い夏は暑い西アフリカからの音楽で乗り切ろう。マリ音楽の女王とたたえても、誰も異論をはさめないウム・サンガレの新盤は初めから最後まで名曲ずくめ。今回も、彼女の歌をどこまでも大切にするニック・ゴールドのプロデュース。ンゴニ(弦楽器)、バラフォン、カルバス(打楽器)といった伝統楽器に、ギター、べース、ドラムといった洋楽器が絡んでいくのだが、その音楽的バランスのうまさに、ゴールドのアフリカ音楽への愛が感じられる。
例えば1曲目 “Sounsoumba”の出だしを聴いてみよう。バラフォン、ンゴニが深く柔らかくリズムをきざむところに、ホーンやベースがかなり唐突にテーマを導き、そこへマリならではの優雅な女性コーラスが流れるように入り込み、ボクらは女王の歌を待ち望むことになる。そのビロードのような響きを持った声は、これまで以上に中音域から低音域にかけて深みを増し、そのメッセージはますます力強い。曲の中ほどから、フルートにあおられつつ、楽しいダンス曲になっていくあたりのみごとさ! シェイク=ティディアン・セックのハモンドオルガンがソロをとる3曲目もヒットしそうだし、狩人たちの弦楽器といわれるドンソンゴニが活躍する “donso” は、その不思議なリズムに任せて体をゆらしていると、心までマッサージされるような快さ…。(真)
World Circuit Production 19e