なぜか国民がそっぽを向く6月7日の欧州連合議員選挙。1979年以来5年ごとの比例代表制選挙(仏8選挙区)だが、EU委員会にしろEU議会(736名:独99/仏伊英各72/スペイン・ポルトガル各50、その他)にしろ、国民が現在直面している経済危機による失業、生活苦に対して何をしてくれるのかとEUへの懐疑心が強まる一方。2004年選挙の棄権率は仏独とも57%、英国61%、ポーランド79%。今回はそれ以上の棄権率が予想される。
オブリ社会党第一書記(リール市長)は外見的には党内統一を果たしたがカリスマ性はいまいち。昨秋、女性同士で第一書記の座を争ったロワイヤル前大統領候補を牽制しながら、オブリ第一書記は「サルコジ制裁投票」とEU共通の社会政策を力説する。が、金融危機対策でEU舞台で活躍したサルコジ大統領の行動力には歯が立たないよう。
04年選ではPSは28.9%でUMPの16.6%を引き離したが今選挙予想得票率は逆転し、Tns-Sofresの調査(5/25-26)ではUMP 26%、 PS 19%、中道 MoDem 14%、エコロジー派(パリ地方区コンバンディット、南西部ボヴェ)11%、極右ルペン派 6%、極左反資本主義新党(ブザンスノ党首)6%と続く。社会党が最も恐れているのは、中道・左派候補がそろってアンチサルコジ戦線をはり、野党支持票が分散しかねないこと。さらにMoDemのバイルー党首はサルコジ大統領に対抗できるのは自分しかいないと、次期大統領選の前哨戦を進めていることだ。
超リベラル派バローゾ委員長(元ポルトガル首相)が指揮するEU委員会への反発が強まっているなかでEU議会の存在は軽視されがちだ。だがEUによる加盟国への農業援助金や漁業割当規制などのほかに、国民が恐れていたサービス業自由化ボルケンシュタイン指令(EU出身国の労働条件で隣国で働ける)は、現地の労働条件に従うという妥協案をEU議会が成立させている。また化学物質の輸出入には無害・安全性の保証を3万物質に課し、農薬使用量の規制、海運業者への難船責任の分担指令、国外からの携帯メールやダウンロードの値下げ指令など環境・消費生活にまでおよぶ。それらはEU議会で討議、採決されている。司法関係においても国民は人権・民事判決を欧州人権裁判所に控訴でき、自国の判決を無効にすることもできるのである。
与党候補の支援に力を入れるサルコジ大統領は5月10日、ベルリンでの仏独与党集会でメルケル独首相に、「フランスはドイツを愛し、尊敬する親独国です」と、G20サミット以来深まる仏独相思相愛の姿勢を表明。懸案のトルコのEU加盟問題については、両氏とも公式加盟は避けEUの特別協調国にしたいと明言している。
EUは27カ国に拡大し、旧加盟国から新加盟国へ産業や工場が移転、今日16カ国がユーロ圏をなし完全自由化が進む。EUはもう引くに引けない「運命共同体」の道を歩みつつある。(君)