八百屋の一角をぽっと明るくしているのが、山積みにされているオレンジたち。オレンジは、フランスではリンゴに次いでよく食べられている果物だが、ランジス市場で取り引きされる年間約3万トンのオレンジは、すべて、スペイン(約70%)、モロッコ、チュニジア、南アフリカなどから輸入されたもの。
navelと呼ばれる、皮におへそのようなものがあるものから、主に冬期にイスラエルから輸入される大きめで色が黄色に近いもの、sanguineという皮や果肉が赤みがかったものなどがあるが、ボクの好物は中形のmaltaise。種はあるけれど、適度の酸味をもった果汁がたっぷりで、素晴らしい。
オレンジは、ツヤがあって重たいものを選ぶこと。室温に置いておけば、4、5日はもつのがうれしい。オレンジの皮を薄く切って料理に使う時は〈non traitées 無処理〉と記されているものを選ぶことが肝心だ。
そのまま皮をむいて味わったり、搾ってジュースにするだけでなく、フルーツサラダに加えたり、ムース、シャーベット、ジャムやマーマレードにしたりと用途が広い。オレンジの香りとその甘酸っぱい風味は、カモ肉、子牛のレバー、マスや舌ビラメなどとの相性がいい。子牛のすね肉を煮込んだオッソブーコにもオレンジの香りがきいている。
●オレンジのサラダ
オレンジ数個は、鋭利な包丁で、白い部分が残らないように皮をむき、5ミリほどの厚さに輪切りにし、種があったら取り除く。キュウリ1本は薄く輪切りにし、塩をさっと振ってしばらく置いておき、冷水でゆすいでから水気を切る。このオレンジとキュウリをサラダボールにとって混ぜ合わせ(グラスにキュウリ、オレンジ、キュウリ、オレンジと交互に重ねるのもきれい)、マスタードのきいたヴィネグレットソースを添える。