60~65歳の就業率がわずか10%のフランスで、60代後半の労働者が増えることを想像するのは難しい。国民議会で定年退職義務年齢70歳が可決され(3ページの記事を参照)、定年年齢の問題がにわかに注目されている。
高齢化社会による年金金庫の赤字膨張、高学歴化と就職難による就職年齢上昇により、60歳までに41年間の年金保険料支払期間に足らず、満額の年金がもらえない人が増加していることから考えると当然の成り行きともいえるが、ことはそんなに簡単ではない。ホワイトカラーが70歳まで仕事を続けるのはあまり困難ではないかもしれないが、肉体労働者ではそうはいかない。仮に労働者の方は働きたくても、生産効率の落ちる高齢労働者を解雇したくてもできないという雇用者側の悩みが生まれてくる。シニアが職場に残ることで、ただでさえ難しい若者の就職がさらに困難になる恐れもある。もちろん、早く就職して41年間年金をかけた人は60歳あたりで年金生活に入れるわけだが、そうでない場合、60歳で悠々自適の年金生活を、というフランス人の夢は今後ますます難しくなるのだろうか。(し)