フランス第3位の銀行ソシエテ・ジェネラルの若いトレーダー、ジェローム・ケルヴィエル氏(31)が、昨年以来、架空取引をねつ造しながら欧州の株価指数先物の持ち高が490億ユーロ(約7兆8千億円)に達するまで不正取引を行い、株式史上最高額49億ユーロの巨額損失を出した疑いで世界中が騒然としている。 ケルヴィエル氏は7年前に入行し、後方支援の事務部門を経て、2年前から融資投資部門の新鋭トレーダーだが、年収は10万ユーロ程度。昨年、15億ユーロの好成績を上げ、30万ユーロのボーナスを獲得。エリート校卒の多いなかでリヨン大卒という引け目があったのか、単独で株式指数先物取引の「鬼」となり、チェック制度を把握したうえで他の行員のアクセスコードを使って虚偽の取引履歴を入力し、発覚を逃れていた疑い。 1月19日、ブトン最高経営責任者と経営陣がこの不正取引に気づき、23日まで政府にも知らせず何をしたかというと、実際にケルヴィエル氏の不正取引がもたらした損失は14億ユーロだが、この穴を埋めるために是が非でもと持ち高490億ユーロの株式指数先物を21日月曜から叩き売る。それが〈暗黒の月曜日〉のミニ暴落(米連邦準備理事会FRBは先手を打ち3.5%に緊急利下げを決行)に拍車をかけ、3日間で損失総額は49億ユーロに達した。「背信行為」「文書偽造」などの疑いで取り調べを受けているケルヴィエル容疑者によれば、不正取引は私腹を肥やすためではなく、同行が490億ユーロの持ち高を慌てて手放さなければ損失額は4分の1ですんだという。 それだけではない、ブトン氏は1月24日、今まで内密にしてきた米国のサブプライム(低所得者対象の住宅ローン。債務不履行の増大で金融危機に)への投資により、同行の焦げつきは20億ユーロにのぼり、損失総額は約70億ユーロと発表。ブトン氏は責任をとり昨年のボーナスと、向こう6カ月分の給与(月10万ユーロ)を返上し、辞任を申し出たが理事会に拒否され、やむなく留任。現在、ブトン氏は55億ユーロの緊急増資を目指し、同行の株主である米系銀行と交渉中だ。 またソシエテ・ジェネラルの米国人理事の一人、A・デイ氏が不正取引発覚の10日前(1/9-10)に、同行株9500万ユーロを売却しておりインサイダー疑惑が浮上。これらの疑惑やサブプライム問題が重なってかソシエテ・ジェネラルの時価総額はこの一年で半減し(360億ユーロ)、ケルヴィエル氏の行った不正取引額以下に。このチャンスをタカのように狙っているのがフランス最大行BNPパリバ他数行。同行買収の噂が飛び交っているなか、行員13万人(仏6万人)の将来は?(君) |
1月25日付リベラシオン紙の1面。
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