サルトルが1955年に書いた戯曲で、冷戦が始まって数年後のフランスで、20世紀最大のペテン師といわれる男が逮捕を逃れるため「自由を求めて逃げてきた」と、ソビエトの大臣ネクラソフになりすまし、とある大新聞社へ偽の情報を流したために引き起こされる騒動がシニカルに、そしてコミカルに描かれていく。赤狩りが盛んな時代、共産主義者を弾圧せよと政府からは圧力をかけられ、ライバル紙をぎゃふんと言わせるようなスクープをと幹部たちが騒ぐ中、正直な編集員とやり手の編集長がとった選択とは…。いつの時代にも報道操作の裏には必ず個人の利害がからんでいる。何を真実と呼び、何を信じればよいのか? 矛盾と不条理に満ちた社会の中で、個人とは、自由とは? と皮肉たっぷりにサルトルは問いかける。 ジャン=ポール・トリブーの演出は、ドタバタ喜劇性を強調しすぎる感はあるけれど、いずれも粒ぞろいの役者たちの演技のおかげであっという間に2時間が過ぎる。特にペテン師ド・ヴァレラ役を演じるエリック・ヴェルダンの奮闘が目立つ。そうそうサルトルはアルセーヌ・ルパンの大ファンだったとか。そういえばペテン師ド・ヴァレラの知的でエレガントな人格、風貌はルパンに似てる! 27日迄。(海) |
photo Lot
Théâtre 14 Jean-Marie Serreau : |
●Shunkin 谷崎潤一郎の『春琴抄』がフランスで初の舞台化。この朗読劇(脚色は竹田真砂子)は、2003年に紀尾井ホールで初演されている。琴と三味線の音色と共に春琴や佐助を演ずるのは、この劇場が抱えるベテランたち。13日迄。 Théâtre de la Huchette : 01.4326.3899 |
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