左の欄で取り上げたスラムのスターが「病んだのっぽの体」、仲間内の通称はファビアン。この夏、彼のファーストアルバム『Midi 20』からのプロモーションビデオがテレビによくかかっていた。10月初めにはパリのバタクラン劇場で9日間の公演を行い、連日超満員。 1977年セーヌ・サンドニ県のル・ブラン・メニル市で生まれる。父は市役所勤め、母は図書館司書だったが、小さい時から読書は苦手で、もっぱらNTMなどのラップを愛聴。長身をいかしてのバスケットボールが得意でプロを目指したが、20歳の時に公営プールで頭を強く打って半年以上のリハビリを受ける。今でも右半身が不自由で杖を離すことができない。26歳の時に初めてスラムに参加。以来その評価は高まるばかりだ。 「ボクは都会の子供、騒音の子供。ざわめいている群衆が好きだ。笑いや叫びが好きだ」と育ってきた郊外の豊かさを詩にしているが、「多数の車に放火した若者たちと同じ側に立っているんだ」。きょうも郊外の若者たちの頭の中で、ヒップホップとは違った優しい音楽にのって、「病んだのっぽの体」の、どこか憂愁に満ちた詩が渦を巻いているに違いない。(真) |
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