●Alain Robbe-Grillet《La Reprise》 ヌーヴォー・ロマンの代表者として知られるロブ=グリエのこの新作は、何よりもまず、スパイ小説だ。 1949年。フランス情報局諜報員アンリ・ロバンが、極秘任務のためにベルリンに送り込まれる。彼にその任務の詳細は知らされていない。ベルリンに着いた当夜、一人の男が暗殺され、事態は彼の理解を超える方向へ進んでいく。このスパイ小説の醍醐味は、一言でいって、「二重性」にある。ベルリンへ向かう彼は、彼と瓜二つの男と出会う。彼の語りで始まるこの小説であるが、その語りにはもう一つの語りが重なり、別の真相を語る。どちらが真実なのか? 彼に託された極秘任務はさらに彼の知らないもう一つの極秘計画の一部なのか? 双子のホテル経営者、そして、いずれも死んだと思われていた双子の兄弟。第二次世界大戦直後、西と東に分けられた占領下のベルリンでは、全ての登場人物に二重スパイの疑惑がかけられるだろう。混乱する現実に、彼の夢、幻想、幼児期の記憶が重なる…。 サスペンスとどんでん返しに満ちたこの小説は、完全なスパイ小説であるだけでなく、1950年代の最盛期のロブ=グリエ小説を彷彿させる。1953年の『消しゴム』はもちろん、この新作はこれまでの彼の数々の小説の断片の反復である。そして、1981年の『Djinn』以来、20年ぶりのこの小説は、来年生誕80年を迎える小説家ロブ=グリエを、20世紀フランス文学の中で、そして21世紀へと生き残っていくフランス文学の中で、重要な作家とすることだろう。(樫)
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“Il y aurait en fait quelqu’un, a la fois le meme et l’autre, le demolisseur et le gardien de l’ordre, la presence narratrice et le voyageur… solution elegante au probleme jamais resolu : qui parle ici, maintenant ?”( p.226-227)
Les Editions de Minuit, 2001, 256 p., 15,09euros (99 francs)
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