ストラスブール大学の造型美術科を卒業し、昨年10月からパリに拠点を移したギヨームくん。電子音楽とスケートボードを愛する23歳のフツーの若者だけど、本職は教師。中学校で美術を教えている。まだまだ新米先生の彼は、授業中の生徒のうるささに頭を悩ます日々。ある日、彼は現状改善策として、《授業中は静かにします》という契約書を、生徒と生徒の親たちに配りサインをしてもらった。さて、結果のほどは?「Rien a change(何も変わらなかったよ!)」 そんな世知辛い仕事のイライラも、絵を描き始めれば忘れられる。だからアパートの条件は、第一に制作活動に十分なスペースがあること。ところが昨年アパート探しをした際に想像以上に苦戦を強いられ、結局妥協をして小さめの部屋だが入居することにした。19区にあるその部屋は、日当たり抜群で、たくさんのライバルがいた。そこで彼はアパートに何度も訪れ、大家さんに「長く住みます!」と断言し、ようやく無事にパリの住処が定まったのだった。 「古い建物がひしめき合って、全体的にハーモニーのないのが面白い」と彼が語るように、このあたりはアパートの間に挟まれた一軒家も多く、アンバランスでさびれた独特の雰囲気が漂う。部屋に関しては、たくさんの鳥が飛び交う4階からの開放的な眺めと、木の雨戸から差し込む柔らかな日射しが特にお気に入りだそう。 そして室内で一番目を引くのは、何といっても彼のダイナミックな作品群。中にはかなりの大きさのものもあり、ちょっと窮屈そう。「絵の保存と制作スペースを考えると、やっぱりこのアパートは僕には狭すぎた。またそろそろ引っ越ししないと…」。でも大家さんとの約束もあるから、しばらくは我慢しなきゃいけないのでは?「いやいや、僕にとっては半年住めば十分長期、だからsans probleme!(問題なし!)」 その図太さがあれば、悪ガキ生徒たちに打ち勝つ日も近いはず、頑張れ!(瑞) |
窓の外では鳥が飛び交っている。 この写真では見えないが、室内は彼の作品でうずまっている。
*6月25日から7月7日までギヨームくんの個展「Ut pictura Junglist」が開かれる。
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地元民が憩う上品な公園。
ギヨームくんに、スケートボードをするのにお薦めのスポットを訊ねたら「友だちの家から近い17区の公園Square des Batignollesにはよく行くよ」とのお返事。 いつも彼がスケボーをするのは、古代ギリシャ風の円柱が美しいSainte-Marie-des-Batignolles教会の裏手にあたる公園の出入り口付近。人通りも少なめだからのびのびプレイ。失敗しても人目につかなくていい。公園の反対側にはペタンク場があり、近所のおじさま方が静かに勝負に燃えている。ナポレオン3世統治下に計画されたこの英国風公園は、いたって清潔で上品。曲がりくねった小道や岩壁、人工の泉水が、優雅な田舎風情を醸し出す。敷地内では、30m以上の高さを誇る樹齢140年以上の3本のプラタナスの木が、市民生活を見守る。芸術家に愛されたバティニョール界隈にふさわしく高踏派詩人レオン・ディヤックスの胸像もある(残念ながら、現在は修復中につき姿を消している)。そして、フランスの公園入り口になぜか多い緑の鉄製体重計を、ここでもまた発見。一回1フラン也。でも実際に使っている人を見たことがないが、一体何のために?「いや、僕にも分からないけど…」とギヨームくん。生徒に聞かれたら困るだろうから、今度調べておいてあげよう。(瑞) |
*Square des Batignolles : Place Charles Fillion 17e |