1982年、大量のトラベラーズチェックを偽造してパリ裁判所の被告席に立ったルッチョさんは叫んだ。「君たちは誰のために働いているのかわかっているのか。組織された盗難をやっているのが、銀行だ。それも国際的だ! 犯罪者は君たちだ!」。その信念と怒りを前にして、告訴したシティ・バンク側はたじたじになったという。 ルッチョさんは、1931年スペインのカスカンテという村に生まれ、ジャガイモだけを食べるような貧困の中で育った。軍隊のユニホームを売りさばいて脱走し、1954年フランスに密入国。1957年にカタロニア独立運動のアナーキスト、エル・クイコに出会って、フランコの圧制と闘うことを誓う。それ以降は、銀行強盗、パスポートや紙幣の偽造で資金を作り出し、それを同志に届けるために死の危険を冒しながら何度もスペインの国境を越える。パリで石工という重労働を続けながら闘い続けた彼の、映画を見るような痛快な生きざまをフォローした一冊。心の底から勇気がわいてくる。69歳の今も、ルッチョさんの頑丈な体と精神は少しも衰えず、パリ20区にルイーズ・ミシェル・センターを創設して活躍中だ。(真) |
Flammarion社発行。139F “Et vous, est-ce que vous vous rendez compte pour qui vous travaillez? |