● L’Ecole de la chair
人間の肉体は金銭で買えても、感情までを自由にすることはできない。そのことを十分に承知しながら、自分より年の若い男を「所有する」ために財力と労力を費やす中年女性(と一言で片付けるには美しすぎる?)を演じるイザベル・ユぺールの静かな存在感に圧倒される。傍らで仙吉=カンタンを演じるヴァンサ ン・マルチネーズは、その役柄にぴったりの野良犬にも似た野生味に溢れているとはいえ、所詮影の薄い存在でしかない。
三島由紀夫の原作がどう扱われているかというより、監督ブノワ・ジャコがこの作品で見せたかったのは、プライドの高いひとりの女 =ユぺールが自己を崩壊し喪失し、すべてを達観し開き直るまでの微妙な感情(表情)の変化で、それがこの作品の核をになっている。
(海)
Livre
● “Ou s’embrasser a Paris”
アムールの街、パリ。様々な恋人達が、様々な場所で愛を囁いている。パリは多くの恋愛映画の舞台だ。この本はキスシーンの撮影場所のリストではないが、いかにパリが映画的な街であるかを描く。いくつかの代表的映画のキスシーンはもちろん、ロマンチックな映画館、映画のようなラブシーンを体験できるスポットなど、ロマンチックなパリが紹介される。実際に実行するかは別として、このガイドは気分をロマンチックにさせてくれる。けど本当にロマンチックなのはキスをする場所ではなくて、キスしている瞬間、キスした場所、そのsensationと 想い出…。