Lamarck-Caulaincourt 界隈(18区)
モンマルトルの丘は、観光客であふれ商店がギッシリと並ぶ表側に対し、その裏側はしっとりと落ち着いていながらも洒落た店がほどよく点在するのが心地よい。黒部響子さんはこの界隈に住んで20年。その昔、彼女がまだ日本に住んでいた頃、旅行でやってきたパリで迷い込み、お気に入りの道を見つけたことがあった。モンマルトルで最初に住んだアパルトマンがその道であったと気づいた時には、運命的なものを感じたそうだ。こうした「思い」と「現実」がどこかでつながる偶然ってあるものだ。 パリの街に相応しい物語の始まりではないだろうか。
当時庶民的だったモンマルトルの街は、映画「アメリ」を境に大きく変わったという。現在サンパな若者が増え続けるこのカルチエに黒部さんも当然同化している。大好きなのは日曜日の朝。数人の地元人がパンを買いに行く以外歩行者のいない静かな道を通り抜け、終点はサクレクール寺院前 。パリの街全貌と広がる大きな空を見ると、言葉に表せない満たされた気持ちになるという。
黒部さんは日本企業のパリ支部で長く働いていて、この11年間は特にショコラエキスパートの第一人者として活躍してきた。フランスを中心にヨーロッパの秀逸ショコラティエを日本に招き紹介する催事は現在有名大イベントとなっている。しかし、 立ち上げから関わってきた黒部さんの仕事は単に催しのセットアップではない。アーティ0ストともいえるショコラティエたちの感性とその味の感動を日本に伝えたいと願う黒部さんの情熱、そして元来舌が肥え味に好奇心旺盛な日本の人たちがそれを直に受け取り、喜びの反応がショコラティエたちに伝わると、そこからはもう雪だるま式に相乗効果が起きていった。つくる側と味わう側、味の信頼関係が一度築かれると、ゆるぎないものになるのもショコラならではと実感したそうだ。
黒部さんの夢は、いつかカカオのプランテーションを訪れ自分で見届けること。古代アステカではショコラは神の贈り物と言われていたらしいが、ショコラに魅了されると、究極は原点への巡礼へと導かれるのかもしれない。(久)
●Hope Café
散歩コースの途中で寄り道するカフェ。今風の小洒落たカフェだが、地元の常連客の年齢層は幅広く外国人観光客も入れ替わり立ち替わり。その自然な居心地の良さで、各々いろんなスタイルの人がいるのが面白い。ブルターニュ産の有機ビールやオーガニックな料理で人気。
10h-22h、日11h-16h。月休。
64 rue Lamarck 18e 01.4606.5440
● L’Etoile de Montmartre
黒部さんがカルチエに住み始めた頃からひいきにしている店で、仲のよい友だちと一緒に来るところ。客層は地元人ばかりでアーチストが多く文化的な雰囲気が感じられ、テラス、店内どちらもよし。ワインとともにチーズやシャルキュトリーのプレートを楽しむことが多い。
7h30-02h、食事は12h-23h。無休 。
26 rue Duhesme 18e 01.4606.1165
● La Mascotte
モンマルトルの人々に愛され続けるビストロ。レトロなままの店内に昔からのギャルソンスタイルの従業員が嬉しい。黒部さんは家族や親戚と一緒に来るのが好き。もちろん白ワインのお伴には、店の看板であるカキの数々。もちろんその他シーフードも盛り合わせで。
8h-23h30、食事は12h~。無休 。
52 rue des Abbesses 18e 01.4606 .2815
銘ショコラティエのファブリス・ジロット氏のアトリエにて打ち合わせ。
映画『アメリ』でお馴染みのメトロ出入り口。
イケメンの息子さんとバカンスはギリシャにて