●『Les Drôles de Poissons-Chats』のクラウディア・サント=リュス監督インタビュー
急病で入院したクラウディアは、エイズ患者のマルタと病室で隣同士に。4人の子どものシングルマザーでもあるマルタは、退院後もクラウディアを我が子のように気にかける。映画『Les Drôles de Poissons-Chats』は、若きメキシコ人女性監督が、自身の実体験を投影させた作品。現実はたぶん悲喜こもごも。でも重くて軽い日常を分かち合える家族がいれば、人生の色合いは確実に変わる。名カメラマン、アニエス・ゴダールが捉える、鮮やかな人生の「色合い」にも注目だ。
実際のマルタとの出会いは?
彼女に出会った時、私は辛い時期にありました。自分がどこに属しているかわからず、不安な気持ちでいたのです。当時、マルタは8年間もエイズ患者でした。そんな彼女が晩年、私を養子のように迎えてくれたのです。私は彼女が死と共存し、生き抜く様子を間近で観察し、彼女の生きる力に感嘆しました。自分の悩みが、ちっぽけなものにも思えました。
マルタ役のリザ・オーウェンさんが暖かくポジティブな存在感です。
リザはメキシコの演劇界で有名な女優です。私は監督として初長編作品だったため、役をオファーするのも気後れしていました。しかし彼女は大変協力的で、2度目に会った時にはエイズ患者に見えるようにと体重を落とし始めていました。冒頭の病院のシーンでは、リザの演技の素晴らしさに、思わず私が泣いてしまいました。
次女のウェンディは、亡くなったマルタの本当の娘が演じています。
彼女は個性的な娘さんで、代わりとなる役者を探すのが困難でした。そこで本人役を演じてくれないか頼んだのです。母を失った経験を辿り直させる残酷な提案ではと悩みましたが、本人も「自分のためになる」と引き受けてくれました。完成した映画を見た彼女は、「DVDのボタンを押せば、これから何度でも母に会える。なんて幸運なの」と言ってくれました。マルタの他の子どもたちも、本作を映画祭で見て大喜び。皆上映中に笑い過ぎ、周りの観客に迷惑をかけていたほどですよ。(聞き手:瑞)