食欲の秋を彩る「味覚週間 La Semaine du Goût」。1990年からフランス全土の学校や企業、レストランなどで同時開催されてきた、実践的な味覚教育イベントだ。料理のプロや教育関係者たちの食への情熱と協力に支えられ、今や国民認知度9割以上の人気イベントに成長した。
今回は味覚週間初日の10月14日に、食育の授業を見学させてもらう。場所はパリ7区の私立小学校。イベントの生みの親で、料理評論家のジャン=リュック・プティトルノー氏立ち合いのもと、有名精肉店「Le Bourdonnec」のカリスマ店長イヴ=マリ・ルブルドネック氏、エリゼ宮の副料理長で料理人・パティシエ協会会長のギヨーム・ゴメーズ氏が、CM2(小学校5年生)の生徒向けの味覚の授業を受け持った。
プティトルノー氏によると、かつて料理教育といえば技術の伝授が主。しかし食育にとって重要なことは、何よりも食に対する「好奇心」。そこで、口にしている食材は何なのか、生産者は誰なのか、などを子供に意識させることで、食への興味を促すことが内容となっている。例えば、数種類の野菜チップスを見せ、何の野菜か当ててもらう。白ニンジン、キクイモ、赤ビーツなど、ちょっと珍しい野菜のチップスだったが、さすが美食の国の子供たち、ちゃんと野菜の名前を言い当てていたのには驚いた。とはいえ、なかには「僕はナスが大嫌い。味も色も変だから」などと言う子もいる。そんな時、料理人ゴメーズ氏は、「でもナスのチップスを食べたことはある? ナスのグラタンやパスタも嫌い? 嫌いだと思っているのは、いろんな食べ方をしていないだけかも。食べ物に先入観はもたないで」とフォロー。子供も納得の様子だった。
このような味覚の授業は、イベント期間中に国内で約5千回行われる。「美味しい思い」ができる子供たちはもちろん、保護者や教職員たちの反応も上々である。イベントの成功を受け、すでに2011年からは日本でも「味覚週間」としてスタート。今年からは中国にも上陸する。(瑞)
料理人ギヨーム・ゴメーズ氏(左)と 精肉店店長イヴ=マリ・ルブルドネック氏。