フランスでは、大人をたたいたり、動物をたたいたりすることは法律で禁じられているが、自分の子供をたたくことは禁止されていない! EU27カ国のうち23カ国は、法律で子供への体罰を禁じているが、フランス、イギリスほか2カ国は、同内容の法律がない。「お尻(しり)をたたく、たたかない」がまた話題になっている。というのも、最近になって、イギリスの子供保護団体が、子供への体罰を禁止する法律をフランスやイギリスでも制定するようにと欧州委員会に働きかけたから。それに対してファビウス外相は、刑法で未成年者への暴力を禁止しているのだから、新しい法律は必要がない、とそっけない返事。それを裏付けるかのごとく、10月11日リモージュの軽罪裁判所で、子供の尻をむき出しにしてからきつく何度もたたいた父親が、その行為が「暴力的だった」として500ユーロの罰金を科されている。
2007年の調査によると、子供時代に親からピンタをくらったりお尻をたたかれたりした人がなんと95%。今でも同様の体罰を加えている親が87%もいる。リモージュで有罪判決を受けた父親同様に、「お尻をたたくことも教育の一つ」と考えるフランス人の親がまだまだ多いからだろう。オヴニーの子持ちスタッフに聞いてみても、みんな軽くお尻をたたいたことの経験者。ボクも、子供たちが小さい時に一、二度軽くお尻をたたいた記憶があるし、「私は、あんまりイライラさせられたから、足を引っかけて転ばせたこともあったわよ」と母親は言う。でも、幸いなことに、成人になった息子と娘はきれいに忘れてくれている。子供の教育のためなどときれいごとを言いながら、実際は親がイライラしてつい、ということが多いし、心理学者によると、体罰を受けた子供たちは、自分の子供たちにも体罰を加える傾向があるという。
フランスでも、左派、中道派の議員の間で、子供への体罰を禁じる法律を望む動きがあるが、まだまだ少数派。欧州議会の人権委員会の責任者によれば、「父権が強い国では、子供をたたくことを禁じる法律は、国が私生活に介入してくると見られるからだ」という。フランスの中道派議員は「家庭外で暴力を振るう子供は、ほとんどが家庭内で体罰を受けている。たたいたからといって、子供が、親を敬うことや親に従うことにはならない」と主張するが、法律ができたからといって、お尻をたたく親が減るのだろうか、という疑問は残る。
そして、「うるさい、だまれ!」とか「おまえはクズだ!」のごとき子供へのコトバの暴力の方が、子供にとって後遺症になりそうだが、これを禁じる法律の制定は、どうみても不可能だ。(真)