ポスターを見て「懐かしい!」と飛びついたこの戯曲。前に観たのは、2001年のことだった。この度は、作者であり演出家のジャン=ミシェル・リブが2002年から座長をつとめるThéâtre du Rond Pointが会場。新しい作家やアヴァンギャルドな劇を上演する劇場だ。さて『動物のいない劇』が始まる。気に入った劇で、細部まで覚えていたはずなのに、11年前の私の記憶はかなり薄れている。そのことが逆に幸いして、リブの好きな、不条理というより、ばかばかしさ、のほうが似合っているabsurditéな状況を心ゆくまで楽しめたように思う。
たとえば自分の娘の名前が思い出せない父親と、そのことに驚がくする娘の話。「お前はいつからモニックという名前なのか!?」。「パパがつけてくれたのよ」。「いや、ママと結婚した時にはお前はそんな名前じゃなかった」。「でも、私が生まれたのはパパとママが結婚した後よ!」。他にも、禁煙のためにとルイ王朝のカツラを被り暮らす夫に、 元の勤め先に乾燥機を買いに行くのなら、カツラを外して欲しいと懇願する妻の話。「昔の同僚に見栄をはるために僕にカツラを外せと君は言うが、そのせいで僕が肺がんで死んだらどうする!?」。「15分の辛抱だから我慢して」。こんなばかばかしい状況がいくつも披露された後、出演者5人が美術館の展示室で、「なぜ近世の画家たちは動物を描かなくなったのか」についての議論を始める。人間はもともと魚だったのに、いつからこんな姿になってしまったのだろう…。この最後の部分の、自由で浮遊する感じがとても気に入ったのだった、と思い出した。(ひ)
Théâtre du Rond Point : 2bis av. Franklin Roosevelt 8e
01.4495.9821
www.theatredurondpoint.fr
3/23日迄。火-土21h、日15h。11€-36€。