●Historias
「思い出さないと存在しない物語」という副題に惹かれ鑑賞した一本。生者からも死者からも忘れられた小さな村。住民は年寄りばかりで、すすけた思い出に包まれ生きている。日々パンをこねては、お決まりのベンチに座る老女マダレーナ。そこへ一人の若い女性が現れ写真を撮り始めた。まるで村を慈しみ、何かから解放するかのように。
騒がしく熱いサンバのノリもラテンなら、ノスタルジックで寓話的な迷宮世界もまたラテン。本作はマルケスやラウス・ルイスと同様、後者の系列だ。本作のカメラマンが「レンブラントに始まりカラヴァッジョで終る」と称した、光と影の世界にも注目。ブラジル人女性監督ジュリア・ミュラ作品。(瑞)