マルセル・マルソーがアメリカ人だったら、アメリカへ行ってました。
子供の頃からバレエを習っていた沢のえみさんが、マルセル・マルソー(1923−2007)の来日公演を見たのは高校生の時。それまでにも色々な舞台を見てきた彼女だったが、マルソーの公演を見て「私は絶対、この人のところに行くしかない」と電撃のように思ったという。彼女はその思いをかなえて、マルセル・マルソーが芸術監督を務めていたパリ市立国際マイム学院(Ecole Internationale de Mimodrame de Paris Marcel Marceau)で学ぶことができた。この学校はもうないので、彼女はまさに得がたい時にマルセル・マルソーから直接に学んだのである。
沢さんのお姉さん(現在もパリ在住の作曲家、鈴木理香さん)がパリ国立高等音楽院(Conservatoire national supé-rieur de musique de Paris)で学んでいたので、「フランスとの距離感はそんなに遠くなかったですけど、もしマルセル・マルソーがアメリカ人だったら、絶対アメリカに行ってましたね」と微笑む。そして桐朋学園短大で演劇を学んだ後にフランスへ旅立った。
この学校は3年制で、1年目は基礎をしっかりと、2年目からは即興やドラマツルギーを学び始めるが、もうそのあたりから、作品を一から創り上げることを叩き込まれる。構成から始まり、演出、美術、衣裳、音楽、照明など上演に関わる全てにたずさわっていく。そして学校の地下にあった劇場で実際に上演する。
沢さん曰く「マイムというのは、言葉を必要としない演劇の総称で、また言葉では伝えられない世界や感情を表現するのです。また色々な舞台表現との融合性が高く、相互に影響し合う表現であるとも言えますね」。そして帰国した後、様々なジャンルの作品に出演、振付、ステージングを行い、また自分のマイム作品を創作、演出してきた。
この6月に彼女の出演作品がある。「ボルヘスの庭 vol.2」と題された、音楽、朗読、身体表現によるパフォーマンスで、アルゼンチンの作家・詩人、ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899-1986)へのオマージュ。沢さんはボルヘス的世界を、マイム、ダンスで表現するとのこと。それに、俳優・歌手の長浜奈津子、ボルヘス研究家の内田兆史、バンドネオン奏者の田辺義博、コントラバス奏者の齋藤徹、版画家の星野美智子の各氏が共演する。これら多彩な才能が集まって、果たしてどんな作品となるのか、大いに期待する舞台である。(慎)
沢のえみ http://www.noemisawa.com/
「ボルヘスの庭 vol.2」
日時:2012年6月16日(土)
昼の部 開場13時 開演13時30分
夜の部 開場18時 開演18時30分
会場:ストライプハウスギャラリー
106-0032東京都港区六本木5-10-33-3F
Tel:03-3405-8108 Fax:03-3403-6354
http://striped-house.com
入場料:2800円