貴族の称号を持つことにあこがれる成金商人ジョルダン氏は、舞踏や音楽、哲学や剣術などを習い、貴族らしさを身につけるのに必死である。おまけに「親友」だとおだてられて本物の貴族のドラント氏にたくさんのお金を都合し、知らないうちにドラント氏の恋の片棒まで担いでしまう。そして自分の年頃の娘をなんとか貴族へ嫁がせようと、娘の求婚者をはねつけるジョルダン氏の前に、オスマン帝国からやってきたという別の高貴な将軍という求婚者が現れて…。
ジャン=バチスト・リュリが音楽と振り付けを担当したコメディ・バレエを、モリエールは12作遺している。ところがルイ14世がバレエ好きだったことからバレエの比重がどんどん高くなったことによって、この第12作目の「町人貴族」(1670年初演)を最後に、モリエールとリュリの共同作業に終止符が打たれた。ルイ14世から、オスマン帝国を揶揄(やゆ)する作品を、という注文を受け創作されたこの作品で、モリエールは王の要望に従いながらも、同時にフランスの貴族社会を自由にそして滑稽に描き出すことに成功している。
ジョルダン氏を演ずるフランソワ・モレルは、1990年代から2000年代の初めにかけて、演出家ジェローム・デシャンが率いる〈Deschiens〉というグループで名を上げた役者だ。モレルのエネルギッシュで軽妙な演技、そして彼をとりまく役者、ダンサー、ミュージシャンたちとの息の合ったやりとり…久しぶりに完成度の高い舞台に出会った。演出はカトリーヌ・イエジェル。(海)
Théâtre de la Porte Saint Martin :
18 bd Saint-Martin 10e
M°Strasbourg-St-Denis
5月27日迄。火-金20h、土20h30、日15h。16€-56€。
www.portestmartin.com/
www.portestmartin.com/