夕方学校にミラを迎えに行くと、バラの花の飾りがついた指輪をしていた。「どうしたの?」と聞くと、男の子にもらったという。よく見ると左の薬指だったので、慌てて違う指に変えさせる。数日後、今度は同じ子から熱烈なラブレター攻撃。その文面に驚いた。「君の存在や香りが心地よい」、「未来を考えられるのは君だけだ」云々。とても九歳の子が書く手紙とは思えない。フランスの学校は子供に詩を暗唱させるから、キザな表現も身に付きやすいのか。「sérénité(平穏)」なんて単語があると「ヴィクトル・ユゴー風か?」と突っ込みたくもなる。だがミラによると「これはあの子は書けない。本から取ったと思う」とのこと。それでもこんな手紙を異性に送るのは、おマセな気がした。
ふと自分の大昔の記憶がよみがえる。小学校の時にクラスの男子から「すき」と書いた年賀状をもらったが、全く同じものを友人の女の子ももらっていた。工夫ゼロの文面に加えてふたまただ。キザなおマセ君もどうかと思うが、告白すら徹底的に手を抜きたがる日本男児も興ざめである。
ちまたはもうすぐバレンタイン。フランスでは男女どちらからでも食事に誘ったり、贈り物をしてもよい。ホワイトデーや義理チョコがないのも気がラクだ。しかし今は娘がおマセにならないかという心配の種が増えた。子供の成長に伴い心配の内容は変化し、その度にとまどう。(瑞)