北駅の向かい。むき出しの梁(はり)のある、暖炉の燃える山小屋風のロフトに住むマチルドさんとダビッドさん。まるでインテリア雑誌から飛び出してきたような二人だ。2007年、グルノーブルで広告業界の同業者として知りあった。ほどなくつき合い始め、結婚を意識する仲に。翌年NY、エンパイヤステートビルで夜景を見ながらプロポーズ。ベタな演出であった。「マチルドの場合、結婚は大切だったし、ほかのオプションなんて考えられなかったよ。彼女の家族や友だちに認めてもらう必要があったから」とダビッドさん。彼女はオルレアン出身。医者の父と専業主婦の母をもつ、敬けんなカトリック家庭に育った。彼の方は両親の離婚を経験し、幼少の11年間をイスタンブールで暮らしたベルギー人だ。二人はパリの区役所と教会、ダビッドさんの母が住むトルコでも結婚式を挙げた。
マチルドさんにとって最も大切なのは家族である。一方、ダビッドさんは2、3カ月電話で話さなくても全然平気だ。新婚早々「一度は外国で暮らしてみたい」というマチルドさんの希望で、シンガポールに職を見つけた彼だが、「遠すぎる」と却下された。その後、ともにロンドンでポストを見つけた。仕事が「死ぬほど」退屈だった彼女は、2009年4月、料理ブログを始める。それが当たった。「それまで自分が何をしたいのか分からなかったわ。やっと情熱を注げる対象が見つかったの!」。レシピを考えることからレストラン批評まで、食に関する記事に夢中だ。「彼女はいつもクリエイティブな生き方を模索してきたから、全面的に応援するよ」とベタ惚れの彼である。
2010年パリに移住後も、ひっきりなしに友人や家族、新しく知り合った人々が訪れる。「料理ブログのせいで、今は誰も私たちを招いてくれなくなっちゃったの。でも、ちょうどいいわ。料理が大好きだから!」。先日、TVの素人料理選手権にも出場。将来は図書館カフェを開くのが二人の夢。戦略はダビッドさん、料理はマチルドさんが担当。夢がふくらむ一方だ。(咲)
マチルドさんのブログ
http://mathildescuisine.wordpress.com/
これから相手に期待したいことは?
「支え合っていこう」(ダ)
「いつもエネルギーをちょうだいね」(マ)
前回のバカンスは?
「先月、3週間フロリダへ。穏かな気候の中、ユニヴァーサルスタジオで子供のようにはしゃいで、エネルギー補給」(マ)
夢のバカンスは?
「南アジアに行ってみたいよ」(ダ)
「世界中を訪れてみたいけど、まずはアフリカへ」(マ)
最近、二人で見た映画は?
「『Intouchables 最強のふたり』。よく、こんな難しいテーマをユーモアを交えてバランスよく描いたと感心したよ」 (ダ)
お気に入りのレストランは?
Le Mesturet(77 rue de Richelieu 2e 01.4297.4068)
「フランスの地方料理。くつろいだ雰囲気で大らか。外国から来た友人には、必ずすすめるの」(マ)
カップルとしての満足度を5つ星でいうと?
★★★1/2「僕たちは育った環境も文化も性質も違うからこそ、補っていける」(ダ)
★★★★「彼には私にないバランス感覚があるから」(マ)
よくソファーに座って食べながら TVやDVDを鑑賞する。寒い時のブランケット。