互いに刺激しあうアーティスト。出会いは1989年、サンテチエンヌ美大の階段で。「第一印象は風変わりなヤツが来たな」とフロランスさん。いつも同じジャケットにメガネ姿、眉間に手をあてて考える人、ダミアンさんには独特の雰囲気があった。出会いから4年、二人が急接近したのは?「人柄以前の問題よ。彼の卒業制作を見た時、あまりに感動して、この人しかいないと思ったの!」と彼女が言えば、彼は付け足す。「はじめは何一つ共通点がなかったけど、彼女は常に真実だけ口にするんだ。僕にとってお世辞は裏切りと同じだ」。その後、フロランスさんは画家、ダミアンさんは映像作家の道を進む。互いの作品に率直な感想を言いながら、信頼関係を築いてきた。
独立精神、自由への願望から結婚はしない。「でも70歳まで一緒にいたら結婚するかも」
二人の生活が劇的に変わったのは、付き合って12年目。娘が生まれた。彼はこう語る。「戦争や大惨事が続く、悲惨で不正に満ちた今だからこそ、次の世代は変わる。それを見届けてほしかった」。だが、子をもつデメリットも痛感した。フロランスさんの場合。「実をいうと、妊娠も出産も怖かったし、画家にとって育児は興味深いことではなかったの。娘が2歳になるまで、今までに感じたことのない不安やいら立ちで、うつ状態になったわ」と告白。制作に没頭する時間がなくなり、今でも週末はストレスを感じるそうだ。子供天国の公園を嫌悪する二人は、もっぱら美術館に連れだす。そこから、少しずつ追体験を楽しむようになり、娘からインスピレーションとエネルギーをもらってきた。フロランスさんは幼少時代をテーマに描き、ダミアンさんは妻を被写体にドキュメンタリーを制作。子供の世界観を表現するシーンには、娘も登場した。「6歳になった娘とは、3人のコラボレーションが生まれてきたんだ。僕らはいつも仕事優先で、夏休みは子供を親の家に送りこむ。エゴイストかもしれないけど、犠牲を払わず、いいバランスを見つけていきたいよ」(咲)
二人のサイト:www.damienfaure-cineaste.fr/
www.florence-reymond.net/
これから相手に期待したいことは?
「ずっと僕をビックリさせて!」(ダ)「彼が幸せなら私も」(フ)
前回のバカンスは?
「この夏、互いの親の家で過ごした数日。キノコやブラックベリーを採ったり、川の滝で泳いだり、飲んで食べたり…」(フ)
夢のバカンスは?
「タヒチ。熱帯魚と一緒に泳ぐの」 (フ)「働いている方がいい。仕事で人と巡り合うことが、次の仕事につながる」 (ダ)
最近、二人で見た映画は?
「ハリソン・フォード主演のSF西部劇『カウボーイ&エイリアン』。世間はSF作品に偏見を持っているが、本当は興味深いジャンルだよ。本作はくだらないけど、面白い」(ダ)
お気に入りのレストランは?
Poum(55 rue Championnet 18e 01.4606.2567)「ここでサラダを食べることもあるけど、オーガニックには興味なし」(ダ)
カップルとしての満足度を5つ星でいうと?
★★★★★「賢くて面白いし、いい年のとり方をしている。年齢と共に、ますます興味深くなってきたわ」(フ)
★★★★★「18年経った今でも、彼女には胸を撃たれ続けているんだ」(ダ)
タンタンに登場する ロケットは、 フロランスさんからの 初めてのプレゼントと。 お互い、いつも 的外れなものを 贈り合うのだとか。