ルコルニュ首相は6月11日、今年3月の市町村議会選挙の経験を踏まえて、2027年の大統領選挙への情報操作による外国の介入の危険性が非常に高いとして、秋の国会にも罰則の強化などの法整備を進める考えを示した。
3月の市町村議会選挙では、マルセイユ、ルーベ、トゥールーズにおいて「服従しないフランス」党(LFI)候補を標的にした外国の介入がル・モンド紙などで報じられた。この3都市のLFI候補はウェブサイトやフェイスブックのページ上で、小児性愛など根拠のない犯罪に加担したと攻撃を受けたり、パレスチナ寄りの姿勢だと叩かれたりした。

この件でパリ検察局は外国からの介入の可能性があるとして捜査を開始した。外国からの偽情報流入を監視するために2021年に設立された政府機関「外国デジタル干渉監視・保護機関(VIGINUM)」が11日に発表した報告書によると、市町村議会選挙でLFI候補を標的にした偽情報キャンペーンは「おそらくイスラエルのブラック・コア社によるもの」と結論づけた。
同社は法的には実在しておらず、インターネットのウェブサイト上のみに存在したが、現在は抹消されている。報告書は、新たなモスクの建設やシャリア(イスラム法)に賛成なのはLFIだけ、などと党そのものに対する偽情報攻撃を展開し、LFIをイスラム原理主義に好意的な政党として、フランス社会の分断を図ろうとしていると分析。
VIGINUMは前回の市議会選では実質的な被害は大きくはなかったと評価しながらも、こうしたデジタル介入ビジネスがますます発展していると警告する。マクロン大統領が4月に外国の介入からフランスの選挙を守るための法案を政府が用意すると発言したことを受け、ルコルニュ首相は、被害を受けた候補者による迅速な提訴を可能にし、罰則を厳しくするといった内容の法案を秋にも国会に提出する意向だ。国民議会は2024年6月の解散総選挙により29年まで任期があるが、大統領選に合わせて前倒し総選挙が実施される可能性もあるだけに、2027年は重要な選挙の年になりそうだ。
また、ボロレグループのメディアで元ロシア国営放送RTの在仏支局長だったクセニア・フェドロワ氏が2025年初め以降、同グループ傘下のニュース専門局などでロシア擁護の発言を繰り返していることに対し、外国からの情報操作との批判が高まっている。バロ外相は5月末、同氏がロシアの偽情報を普及させるロシア公認の扇動者と批判。ヴァレリー・アイエ欧州議員(与党)は同氏を親ロシア扇動者として視聴覚デジタル通信規制局(Arcom)に訴えた。一方で、ジョシュア・ザルカ駐仏イスラエル大使が「2027年の大統領選の勝利者はメランション氏(LFI)以外ならだれでもよい」などと発言したことなどに対し、「介入」ではないかと批判する声もある。
これまで欧州ではルーマニアやドイツなどの選挙で大量のSNSアカウントを入手したロシアによる偽情報による介入があったことが問題になっている。2024年のモルドバの大統領選では投票の10%がテレグラムなどを使って仮想通貨で買収されたという。もはや、世界のどの国でも外国からの介入や情報操作の危険性は高まっており、各国の政府が対策を強固にすることがますます求められている。(し)
