
農産物由来の食品カドミウム汚染に食品安全庁が警鐘。
フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は3月25日に公表した報告書のなかで、食品摂取による国民のカドミウム汚染が進んでいるとし、リン酸肥料のカドミウム含有率の規制強化や、穀物、パン、パスタの消費減少を国民に呼びかけるよう政府に促した。
重金属であるカドミウムは体内に入ると腎臓、肝臓、骨などに蓄積され、生物学的半減期は10~30年と長い。腎臓、肺、前立腺、乳がんなどの発がん性物質であり、骨粗鬆症の一因とされている。2021年にはフランス公衆衛生局(Santé publique France)が、蓄積された仏人のカドミウムの体内濃度は過去10年で2倍になり、欧州他国や北米に比べて3~4倍に達するとし、すい臓がん増加の原因ではないかと警鐘を鳴らした。
18~64歳の国民の47.6%が、ANSESが2019年に設けた基準値(尿中のクレアチニン値1グラム当たりカドミウムが0.5マイクログラム)を超えているという。しかも、若年ほどこの値が高く、2~3歳では100%が基準値を超える。また、別の調査では3歳以上の子どもで1日の許容摂取量を超えてカドミウムを摂取する割合は23~27%とされる。
ANSESはカドミウム汚染の由来も調査した結果、食品が、タバコや産業汚染、化粧品などをはるかに上回る主原因であることも判明。穀物、とくに小麦製品(朝食用シリアル食品、パン、菓子パン、パティスリー、ビスケット、パスタ)やジャガイモの摂取によるものだとする。そのためANSESは、小麦製品の消費を減らして、ひよこ豆などの豆類を摂るよう推奨している。
加えて報告書は、このまま何も対策がなされなければ、健康被害が広がると警告し、リン酸肥料1㎏あたりのカドミウム含有量を20ミリグラム(㎎)以下に制限するよう、2019年の勧告を繰り返した。現在、仏国内での基準は90㎎だ。EU規則でも現在は60㎎だが、2038年には20㎎に下げる予定で、フィンランド、ハンガリー、ルーマニアなどはすでに20㎎にしている。仏でも6年かけて段階的に20㎎までに下げる計画だったが予定通りには進んでいない。また、仏農家は主にモロッコからリン酸肥料を輸入しており、同国には世界有数のリン鉱山があるためカドミウムの含有量が高いとされる。
2025年6月には全国の開業医連盟がリン酸肥料のカドミウム濃度に関するANSESの勧告を政府が受け入れるよう首相府、保健省、農業省に書簡を送った。国内でのすい臓がん患者が30年で4倍に増えており、フランスは世界で4番目に新規患者数の多い国である上に、2030~40年代にはすい臓がんが、がんによる死亡の2番目の要因になるだろうと警鐘を鳴らした。こうしたことを受けて、昨年12月にはブノワ・ビトー国民議会議員(エコロジスト党)がカドミウムを含む肥料の輸入、販売、使用を禁止する法案を提出。今年5月頃に審議される見込みだ。
カドミウム廃水の疑いで、ル・クルーゼの工場に予備捜査。
フランス北部エーヌ県にある鋳物ホーロー鍋で有名なル・クルーゼの工場が、基準値を超えるカドミウムを含有する廃水を出したことについて予備捜査が始まっていると4月3日に仏紙が報じた。カドミウムを含む廃水は昨年2月から10月の間に7回、同工場の処理後の廃水から確認されていたとされ、予備捜査は11月に始まっていた模様。ル・クルーゼ社によると、カドミウムは鍋外部のエナメルコーティングのみに使われており、コーティングの層内部に閉じ込められているため食品との接触はないし、排水は農地に散布されていないという。今後の捜査の進展を待ちたい。(し)



