新パリ市長、エマニュエル・グレゴワール。

パリの街はこの25年間、ドラノエ市長(任期2001-14)とイダルゴ市長(2014-26)、ふたりの社会党市長のもとに形作られてきた。トラムウェイ復活、自転車・バスレーン整備、セーヌ河岸の車道を遊歩道にしたり、自転車やEV車のシェアリングサービスを導入するなど、一貫して自動車の追い出しをはかってきた。そんな両市長のもとで15年以上働いてきたエマニュエル・グレゴワール氏(48)が3月29日、パリ市長に就任した。
パリ市は、ホモセクシュアリティを公言していたドラノエ氏の時代から「LGBTQ+フレンドリー」を誇りとする町だが、グレゴワール氏もその伝統にのっとり、性的嗜好、肌の色、所得が低くても皆と共生できる町、環境を考える町をめざすと集会で訴えてきた。また、氏は昨秋ラジオのインタビューで、小学校時代に数ヵ月間にわたって性的暴行を受けたことを明かしているが、まず着手するのは課外授業の指導者による子どもへの性暴力問題だ。キャンペーン中に事件が次々と発覚し、あなた方パリ市は何をやっていたのだ?と責められ、この市議会選最大の争点となっていた。
新市長はパリの隣町リラの生まれで、ボルドー政治学院卒、5児の父親。演説もディベートもそれほど得意ではないが、それがまた誠実さを醸し出している。

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今回、注目された市長は?

今回、脚光を浴びた人といえば、パリ郊外サンドニ市長に初当選したバリ・バガヨコ氏(LFI)。第一回投票で50.8%を得て早々に当選を決めた。しかし、高得票率で選出された黒人市長への風当たりは強い。
サンドニの大聖堂にはフランス王家の墓があることから、バガヨコ氏が「Ville des rois ロワ」(王の町)と言ったのを、極右が 「新市長は『サンドニはVille des noirs ノワール』(黒人の町)だと言った!」とデマを流した。それを鵜呑みにしたテレビのコメンテーターたちは「では私たち白人は住めなくなるのか?!」などとエスカレート。そんな時も「私は〈眠る王たちと、生き生きとした市民の町〉と言ったのです」とクールにかわすバガヨコ氏。
サンドニ市は人口150万人のパリ首都圏第2の都市。150の国籍の人々が共存する。氏は1973年、パリの隣町ルヴァロワ・ペレでマリ系の家庭に生まれ、パリ第8大学で地政学を修めた。RATPパリ市交通公団の管理職、4人のこどもの父親でバスケットのコーチも務める。
最年少は21歳!
フランス南部オート=ガロンヌ県、人口385人のサン・ベア・レーズ村で地方行政法を学ぶ21歳の大学生シャルロット・ペルファレーズさんが村長に。18歳の時から村議会議員を勤めてきた。
アルザス地方の人口1300人のニダールシェフォルスアイム村でもトム・ポリュスさんが21歳で当選。清掃会社経営のかたわら真っ先に着手したいのは子どもたちの課外活動整備と、学校のトイレの臭い。ふたりとも祖父や曾祖父が同地で村長を務めていたという。
歴代パリ市長
パリ市庁舎のセーヌ側にブロンズの騎馬像がある。これは初代パリ商人頭エチエンヌ・マルセル (1315頃 – 58)像。彼は1354年にパリの商人頭となり、今でいう市長の任務を負った。フランス革命後、市長は選挙で決めるようになったが、1871年のパリ・コミューンでパリ市役所と市長の役職が廃止となり、市議会議長が市長の任務に就いた。市長の座を復活させると決めたのはジスカール=デスタン大統領。そして1977年、ジャック・シラクが当選し、最長の任期18年を務めた。その後ジャン・ティベリ、ベルトラン・ドラノエ、アンヌ・イダルゴと続き、グレゴワール新市長は、革命時から15人目となる。

市町村長のお給料は?
給料ではなく「手当」という。コミューンの人口によって手当は違い、500人以下の村は1155.06€/月。500〜999人の町なら1820.96€。これがマルセイユ(88万人)やリヨン(53万人)のような10万人以上の都市になると5960.25€となる。パリの人口は約204万人で7 487.10 €(額面)。

「政治を政治家に任せられない」市民が立ち上がる。

www.frequencecommune.fr/
庶民感覚を失った政治家には任せていられない ー と市民がリストを組み立候補する「市民リスト(liste citoyen)」。今回は全国で704(前回384)と記録的な数で159市町村で当選。女性が筆頭のリストは40%(他は25%)でパリテ(男女同数)においても優等生。
パリ近郊のメゾン・アルフォール市のように左派諸政党の連合がまとまらず「政治家たちのエゴに振り回されたくない」と市民がリストを結成したケースや、南仏マントン市は極右政党が市政を握って12年になるが、そこにサルコジ元大統領の息子が出馬し、どちらもご免!と市民が立ち上がったケースなども。市民が市の決定に参加することで、市民が不要と判断したスーパーの建設計画を撤回した例などもある。
« 病気の羊 »はたくさんいた。 極右の人種差別は変わらない。

2024年の総選挙前、独立メディアの調査によって極右候補の、人種差別的、ホモセクシャルやユダヤ人に対する差別的なSNSの投稿が多数発見された。RN党は当初 「それは brebis galeuse (疥癬にかかった羊)、例外だ」と弁明したが実際には109人もいた。今回の選挙でもStreetPressなどのメディアが調査を行った結果、250人に差別的発言があった。病気の羊は例外ではなく、群れだった。
LFI叩き。

左派政党「服従しないフランス LFI」は、ガザでの虐殺を糾弾することや、反ファシスト運動との関連などから、選挙前からバッシングの標的に。党の創設者メランション氏に対するテロ計画などもあった。選挙中は党員、支援者らへの脅迫、党本部への爆破予告、ペンキをぶちまけられるなどの破壊行為も地方の支部数十ヵ所におよんだ上、外国からの干渉によりフェイクニュースを流布されるという被害にも。今回の選挙期間は、全般的に、政治的ビジョンの闘いを超えた、不穏な空気が流れていた。
