
4月9日(木)、カンヌ映画祭の約一ヶ月前に行われる恒例のラインナップ発表記者会見が開かれた。今年は初めて、オペラ座近くにある高級志向の映画館パテ・パラスが会場に。
会見の冒頭、イリス・ノブロック会長は、不穏なニュースが流れる不確実な現代において、映画について語ることの意義について言及。さらに、現在カンヌが重視するトピックに駆け足で触れていった。映画制作者の表現と言論の自由を守ること、AIには模倣ができない映画とは、データの寄せ集めを超えた個人的なビジョンであること、さらに、代替不可能な体験を可能にする映画館という場所への愛着について、あらためて強調した。
ティエリー・フレモー総代表によると、今年、カンヌ映画祭が視聴した作品は世界141カ国・計2541本。これは10年前から1000本増に相当する。ドキュメンタリーやアニメ作品がますます存在感を持ってきたのに対し、アメリカ映画は独立系作品は残っているが、いわゆるハリウッドのスタジオで製作される作品が後退した。また、今年は特に社会問題や暴力、歴史について語る「知的な作品」に強い印象を受けたと語った。
コンペティション部門に日本人監督3人
コンペ作品は全21本(うち女性監督が5本)。これまで「常連ばかり」と揶揄されてきたカンヌだが、今年はコンペ中11本の監督作品が初コンペ入りとなった。なるべく新顔も入れようと格闘した跡がうかがえる。最高賞パルムドール受賞者は、是枝裕和とクリスティアン・ムンジウのみである。

コンペ内の監督の国籍はフランス人が最も多く5人。日本人は3人と大健闘。是枝裕和監督作『箱の中の羊』、濱口竜介『急に具合が悪くなる』、深田晃司監督『ナギダイアリー』が選出された。気鋭の若手作品が選出される「ある視点」部門には岨手由貴子(そでゆきこ)監督『すべて真夜中の恋人たち』、有名監督の注目作が並ぶ「カンヌ・プレミア」部門には、黒沢清監督の時代劇『黒牢城(こくろうじょう)』が登場する。
スペイン人監督もペドロ・アルモドヴァル、ロドリゴ・ソロゴイェン、ハビエル・カルヴォ&ハビエル・アンブロッシの3本と存在感がある。東欧を中心にヨーロッパ勢が多く、ハンガリー(ネメシュ・ラースロー)、ポーランド(パヴェウ・パヴリコフスキ)、ルーマニア(クリスティアン・ムンジウ)、オーストリア(マリー・クロイツァー)、ベルギー(ルーカス・ドン、エマニュエル・マール)、ドイツ(ヴァレスカ・グリーゼバッハ)の監督が並んだ。注目すべきは、選考委員会の中で最も論争を巻き起こしたというアルチュール・アラリ監督の幻想的な心理スリラー『L’INCONNUE』だろう。

国際共同製作の作品が多いが、やはりその中心にいるのはフランス。製作国に名を連ねる“広義のフランス映画”はコンペだけで16本もある。そのためか、レア・セドゥ、ヴィルジニー・エフィラ、イザベル・ユペールは複数の作品に出演。起用されるのがフランスで活躍する俳優ばかりになってしまうのだ。皆素晴らしい俳優ではあるが、仕事の一極集中は良い傾向とは思えない。
審査委員長は韓国のパク・チャヌク監督が務める。韓国人の監督が日本人監督の誰かにパルムドールを授与できれば、文化交流としても美しい図になるのだが、と勝手に想像も膨らんでしまう。
今回の名誉パルムドール受賞者はピーター・ジャクソン監督(『ロード・オブ・ザ・リング』)と、歌手で俳優のバーブラ・ストライサンド(『ファニー・ガール』『追憶』)に贈られる予定だ。カンヌ映画祭は5月12日~23日迄開催される。(瑞)
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