8月12日、英国に向かって英仏海峡を渡ろうとした難民・移民船が遭難し、アフガン人が6人死亡、59人が救助された。10~12日だけで1600人が英海岸に到着。地中海でも難民・移民の流れが活発になるなか、欧州諸国は対応に苦慮している。
英国の要請で仏側の監視が強化され、ユーロトンネル経由での密入国は2014年頃から次第に困難になり、アフガン、シリア、イラク人らが英仏海峡を大小のボートで渡航する事例が増えている。その数は2019年2000人、20年8500人、21年2万8500人、22年4万5700人と上昇しており、今年は8月半ば時点ですでに1万6700人。英国は2022年に不法入国者をルワンダの収容所に移送する計画を打ち出したが、非人道的という声も大きく、今年6月には控訴院がルワンダは送還先として「安全な国」の条件を満たしていないとし同計画を違法と判断。最高裁判所が秋に判断を下す。英は7月下旬に不法入国者は難民申請できなくなる法律を制定し、南部ドーセットに500人収容可能な浮遊する難民申請者収容施設を着岸させた。英国は強硬な難民排除策を進めているが、同国の2022年の難民申請者は8.9万人で、独(24.4万人)、仏(15.6万人)、西(11.8万人)より少ない。
アフリカ=イタリア間の地中海ルートも難民・移民が増加傾向にある。国連によると、今年1月~8月初めに9万763人が伊に到着し(22年1年間で10万5131人)、NGOの救助活動にもかかわらず、1848人が命を落としている(22年1417人)。伊渡航の出発地チュニジアが7月、同国に流入するサハラ以南の移民約2000人を水も食料も与えずにリビアやアルジェリアの砂漠に放置した状況を受けて、EUは7月半ばにチュニジアに対して、不法移民渡航抑止に1億500万€、その他の支援に1億5000万€を供出する協定を結んだ。2016年のギリシャへの不法移民のトルコ送還を定めた時と同様に、チュニジアをEUへの移民の防波堤にしようとしている。ギリシャルートでは、6月半ばに約750人を乗せた漁船の遭難事故(約100人救助)へのギリシャ沿岸警備隊の対応が問題になった。
EU加盟国は6月、EU内に着いた難民の申請を1国3万人以上受け入れること、または資金援助する(難民1人につき2万€)ことで合意した。世界の諸地域の不安定な政情や貧困による難民・移民増加への対応に欧州は苦慮しているが、人道的な方法と協力体制を優先する方向に進んでほしいと思う。(し)