3月1日付の仏紙の報道よると、欧州議会は議員・職員らに業務用電子端末での動画投稿アプリ「TikTok」使用を禁止するとの通達を2月28日に出した。欧州委員会も同様の通達を23日に出しており、フランスでも同アプリの使用に関して検討を始めた模様だ。
TikTokは中国バイトダンス社が運営する短い動画アプリで、10~20代を中心に世界で10億人以上のユーザーを持つ。欧州議会は議員・職員約8000人のパソコン、携帯電話その他の業務用電子端末上での使用を3月20日から禁止すると決定した。また、私用の電子端末でも使用しないよう強く奨励。すでに欧州委員会も、委員・職員に15日までに業務用端末や仕事に用いる私用端末からTikTokアプリを削除するよう要請している。削除しない職員は、業務用メールボックスや各種ツールへのアクセスができなくなるという。
こうした動きは、米連邦政府が2月27日に政府職員に対し、機密情報を保護するために、政府支給の携帯電話などの電子端末からTikTokを削除するよう命じたことが背景にある。全50州のうち27州が同様の措置を講じ、米国内での同アプリ使用を全面禁止する法案も下院で審議されている。直後にカナダでも政府支給の端末で、デンマーク議会の端末でも禁止となった。台湾は2019年から公的機関で禁止、インドは20年6月禁止していたが、日本政府も「(政府の)公用端末では、TikTokを含むSNSの利用を禁じている」と27日に認めた。
TikTokを禁止したこれら欧米諸国は、中国政府がTikTok利用者の情報にアクセスすることを懸念している。バイトダンス社は米国人利用者のデータは米国内のデータセンターにストックしており、中国共産党が求めてもデータは共有しないと言明。しかし、中国国内の社員がデータにアクセスできることは認めており、ある情報漏洩の元とされるジャーナリストを突き止めるためにTikTokのデータを利用したと昨年12月に認めてもいる。同社は欧米諸国の禁止措置に弁明の機会が与えられなかったと遺憾の意を表した。22年末のある米調査は、TikTokがフェイクニュースや自傷、摂食障害などの動画に利用者を誘導していると批判している。膨大な個人情報を吸い上げるのは他の米系SNSも同じだが、ウクライナ情勢のためか、米政府はTikTokに対する警戒心を強めているようだ。
フランスでは上院が1日にこの問題についての調査委員会を設け、夏までに何らかの提案を出す予定だ。マクロン大統領はじめ政府閣僚も若年層に向けたビデオを同アプリに投稿しているが、大統領・閣僚の業務用スマホにはTikTokやそれに類するSNSアプリは入れていないと政府は言明している。ヴェラン報道官は1日、各省や公的機関で検討がなされているとしており、情報処理・自由委員会(CNIL)の報告書を待って何らかの措置が取られることになりそうだ。(し)