23e Journées cinématographiques/ Regards Satellites
2 / 2(木)〜 2 / 11(土)
サン・ドニというバンリュー(郊外)から、映画と社会を考える。そんな骨太映画祭「Journées cinématographiques」も今年で23回目。2023年は2月2日から11日まで開催される。今年のテーマは「Regards Satellites 衛星的な視線」。
メイン会場はバジリク・ド・サン・ドニ駅、徒歩0分のアート系映画館 L’ECRANだ。2020年からはサン・ドニ市に隣接するオーべルヴィリエ、ラ・クルヌーヴ、サントゥワンの映画館も共闘参加、コロナ禍もなんのそので映画祭はさらにパワーアップしたようだ。
さりげなくビッグネームが来訪し貴重な作品が上映されるため、映画好きは目を皿にしてプログラムを確認したい。今年の名誉ゲストは反骨の巨人、英国のケン・ローチ。監督作6本が上映されるが、ローチ本人は2月7日の夜の回、20h15からの『Which side are you on? 』(1984年)と、22h15の『ナビゲーター ある鉄道員の物語』(2001年)の時に来場予定。
開幕作品はローラ・ポイトラス監督『Toute la beauté et le sang versé』(上のポスター)。製薬会社の欺瞞に立ち向かう写真家ナン・ゴールディンの闘いの記録で、先のベネチア映画祭で金獅子賞を受賞した話題作。製薬会社の暴走は世界的に現在進行形の話題でもあり、多くの人が向き合ってほしい作品だ。
閉幕作品はパリ18区グット・ドール地区が舞台の映画『Goutte-d’Or』。映画と現代アートの間を漂うフランスの俊英クレマン・コジトールの新作で、本作は昨年のカンヌ映画祭批評家週間に選出。また、あのロシアの鬼才キリル・セレブレンニコフも、新作『チャイコフスキーの妻』を引っさげ、先行上映回に立ち会う。
オマージュ上映はルーマニア系アメリカ人エリナ・レーヴェンソン。ハル・ハートリー作品で見出され、現在は監督としても活躍する個性派俳優。レトロスペクティブ上映は台湾系アメリカ人のパトリック・ワン。
プログラムには「カルト・ブランシュ(白紙委任状/自由に上映作品を選出)」企画が多く、こだわり派の芸術関係者による偏愛作品の宝庫。例えば「Fenêtre sur le Brésil ブラジルの窓」では、2021年にアングレーム国際漫画祭の最高賞・金のフォーヴを受賞したブラジル人漫画家マルセロ・キンタニーリャが参戦。ヘクトール・バベンコ監督『傷だらけの生涯』(1977年)、カルロス・ヂエギス監督『BYE BYE BRAZIL』(1979年)らブラジルを感じる作品が並ぶ。
また、映画館L’ECRANは2006年以来、映画祭「PCMMO /マグレブと中東映画のパノラマ」を実施しており、マグレブと中東映画は得意分野。今回はこの映画祭からカルト・ブランシュも用意、普段目にする機会の少ない作品を発見できる好機となる。
オマージュ企画として見逃せないのが、討論会付き上映会「Hommage — Chantal Akerman et Delphine Seyrig」 。昨年末、1600人の批評家が選び英国映画協会(BFI)が発表する「映画史最良の映画100本」のランキングで、『めまい』や『市民ケーン』を抜いて首位を獲得したシャンタル・アケルマンの『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』(1972年)がスクリーンで見られる貴重な機会だ。
また、その主演女優で、本人もフェミニズムの闘志としても知られるデルフィーヌ・セイリグの手による映画『Sois belle et tais-toi!』(1972年)も上映。フランスとアメリカの計24人の女優仲間にマイクを向け、映画界の性差別を浮き上がらせたドキュメンタリーである。
2月4日の夜から始まるオールナイト上映企画「La Nuit Non Alignée」では、ルワンダ、ブラジル、ポルトガル、そして日本映画の上映が。その日本映画とは、2020年に惜しまれながら他界した大林宣彦監督のファンタジック・ホラー『HOUSEハウス』(1977年)で、00h45から上映予定。できれば普通の時間帯にしてほしかったが、映画マラソンに参加できる体力と気力のある猛者は是非ともご挑戦あれ。(瑞)
● 2023年2月2日(木)~11日(土)
23ème Journées cinématographiques
https://23.journees-cinematographiques.fr/
7€/ 映画祭パス25€。
メイン会場:
CINÉMA L’ÉCRAN
住所:Place du Caquet 93200 Saint-Denis
M ⑬ Basilique de Saint-Denis (以下、位置情報あり)
他、会場となる映画館:
オーヴェルヴィリエの映画館 LE STUDIO(サイト)
ラ・クルヌーヴ映画館 L’ÉTOILE (サイト)
サン・トゥワンの映画館 ESPACE 1789 (サイト)
下はプログラム。見にくいと思うので、下のリンクから見てくださいね。
https://23.journees-cinematographiques.fr/wp-content/uploads/sites/6/2021/03/Programme-FESTIVAL-JC2023.pdf
CINÉMA L’ÉCRAN
Adresse : Place du Caquet , 93200 Saint-Denis , FranceTEL : 01.4933.6688
アクセス : Basilique de Saint-Denis