Château du Clos de Vougeot – Table de Léonce
秋、黄金色に色づくぶどう畑の美しさが「コート・ドール(黄金の丘)」県の由来だと、聞いたことがある。「コート・ドール」はまた、ディジョンからボーヌそしてサントネーまでの60kmにおよぶ、世界に名だたる銘醸地。格付けで最高級とされる〈グラン・クリュ〉の畑が並び、「グラン・クリュ街道 Route des grands crus」とも呼ばれる。それぞれの地形や土壌、陽当たりなどにより区分された畑「クリマ」は1247区画あり、ユネスコ世界遺産に登録されている。
シャトー・デュ・クロ・ド・ヴジョは、そんなコート・ドールの中心にある。「シャトー」とはいえ、いわゆるお城ではなく、シトー派の修道会が1110年頃に造った醸造所だ。現在は醸造はしておらず、「ブルゴーニュ利き酒騎士団 Confrérie des Chevaliers du Tastevin」の本拠地となっている。同騎士団は世界に散在する1万2000人のメンバーで構成されるブルゴーニュワイン振興団体で、日本にも400人ほど騎士がいるとのこと。例年16回開催される「シャピトル」と呼ばれる晩餐会には毎回600人ほどの騎士が集まり叙任式なども行われ、年に2回、ブラインド試飲会を催して名酒には騎士団認定ラベル「タストヴィナージュ」を与えたりもする。11月第3週に行われるブルゴーニュの有名なワイン「栄光の三日間」はボーヌの施療院でのワインオークションが有名だが、ここのシャトーでもシャピトルが開かれる。
そんな、少し秘密めいたシャトー・デュ・クロ・ド・ヴジョ内の、今まで一般には開放されていなかった部屋でこの夏から昼食が供されるようになった。敷地内に16世紀に作られたルネサンス様式の建物の2階。
「レオンスの食卓」と銘打たれたこの昼食会は、ボーヌのワイン商レオンス・ボケの名をとったもの。1889年にこのシャトーを買い、私財を注いで修復にあたった人物だ。そのレオンスさんが自分の嗜好で装飾をしつらえた食堂での昼食だ。大きな暖炉、高い天井、畑が見渡せる大きな窓。「清貧」を理想とし、ストイックなシトー派の教会のイメージとは少し違うが、落ち着いた、贅沢な空間だ。
騎士団の晩餐会のように、会食者は長いテーブルに並んで座り、メインの煮込みなどはテーブルの中央に置かれた大きな銅の器から自分で皿に盛る。格式高く、肩が凝る食事かと思いきや、相席制だったり、サービスの人も冗談を交えながら自然な口調で料理やワインを説明してくれたりするのがちょうどよい。
料理4品とワイン4種がつくコースを選ぶと、まずモンタニー(白)2018がグラスに注がれた。ディジョン名物のジャンボン・ペルシエとカシスのムースの前菜。サントネー(赤)2017でメインの牛の頬肉の煮込みとポテトとキノコ炒め。ニュイ・サン・ジョルジュ(赤)プルミエ・クリュ2014が出てきた。チーズ3品とサントーバン(白)プルミエ・クリュ、カフェと菓子数種だった。騎士団の晩餐会で必ず出るという、このシャトー名物の赤ワインソースをかけたポーチド・エッグ「ウフ・アン・ムレット」がメニューに入っていないのは、なんとも残念だったが。
● Château du Clos de Vougeot
Rue de la Montagne 21640 Vougeot
Tél : 03.8062.8609 www.closdevougeot.fr
シャトー見学のみ : 月休 10h-17h。 自由見学 : 7.5€/2.5€ /8歳未満無料。
ガイド付き見学 : 10€/5€/8歳未満無料。10h30と14h30。要予約。
“Table de Léonce” : 下のふたつの時間帯から選択。
1)10h30からのガイド付きシャトー見学の後12hから昼食。
2)12h30から昼食の後、14h30からシャトー見学 (シャトー見学は参加自由)。
予約はネットのみ www.closdevougeot.fr
ランチ+ワイン4種+シャトー見学 : 75€
ランチ+ワイン6種(うち2種はグラン・クリュ)+シャトー見学 : 105€
子どもメニュー(18歳未満):30€。ベジタリアンは24h前に要リクエスト。
*Voie des vignes : コート・ドールの畑を走るサイクリングコース。
www.francevelotourisme.com/destinations/bourgogne-franche-comte-a-velo/voie-des-vignes
▶︎ブルゴーニュ特集は、全5回にわたって掲載します。
その1「博物学者ビュフォンの製鉄所へ。」
その2「ユネスコ世界遺産・フォントネー修道院と『ガリア戦記』古戦場へ」
その3「フランスの美しい村フラヴィニーの宿」
その4「プイィ・アン・オソワ、運河はトンネルに入る」
その5「ブルゴーニュワイン900年の歴史を刻んだシャトーで昼食を」