リモージュ磁器界の革命児たち、ほか
【特集:磁器の都、リモージュへ】は、5回にわたって掲載します。
〈その1〉250年の磁器の伝統を誇るリモージュ。
〈その2〉リモージュ磁器と、その歴史をたずねて。
国立アドリアン・デュブシェ(磁器)美術館へ。
〈その3〉リモージュ磁器を代表する有名ブランド、ベルナルドーの財団。
〈その4〉19世紀の円形窯「カソー窯」。
〈その5〉若いクリエーターの工房へ。
楽しい!リモージュ焼きものショッピング情報。
〈メイド・イン・フランス〉アトリエ・アルキエ
リモージュ磁器界の革命児たち。
Non Sans Raison(ノン・サン・レゾン)
マルシアル・デュマさんとベルティーユ・カルパンティエさんはモード学校の学友だ。卒業後グラフィック・デザイナー、アートとモード関係の記者、トレンド情報会社、オートクチュールなどの仕事を経て2008年、ふたりでブランド「Non Sans Raison ノン・サン・レゾン」を立ち上げた。
初コレクションのタイトルは、「Avant, ici, maintenant 以前、ここ、今」 。過去のリモージュ磁器と、これからのリモージュ磁器とを今、ここで融合させようという、マニフェスト的なタイトルだ。〈伝統工芸をいかに今のトレンドに乗せるか〉を指南するコンサルタント会社「コアリシオン」も起業した。
磁器は自分たちのクリエーションの他にも、多くのデザイナーやアーティストとの提携で、斬新かつ繊細なコレクションを発表する。長年、パリのトレンド震源地だったコンセプトストア「コレット」や数々のレストラン、国内外とのパートナーたちとも仕事をしてきた。
工房に隣接したオフィスの机に置いてある大きな楕円形のデザイン画のことをたずねると、「テーブルウェアを一新したいとオーダーメイドの仕事を受けた」とのことだった。アトリエには他にも「カフェ・キツネ」や、「Diptyque」に納品する大きな荷物が発送されるのを待っている。
そんな彼らのブランドを紹介する展覧会が2015年、リモージュの国立美術館アドリアン・デュブシェ(磁器博物館)で開かれた。タイトルは「以前、ここ、今 ── ノン・サン・レゾンという経験」。リモージュ磁器を刷新し、新しい境地を切り開く彼らの活動を紹介する内容だ。
優れたクリエーターで、実業家でもあるふたりの評価は高く、ベルティーユさんはリモージュ国立高等美術・デザイン学校の校長に。この学校には磁器科があり、1000㎡の工房もある。
この他にも、年内にはリモージュ郊外でアーチストのレジデンスの、来年はパリのサン・ジェルマン地区にギャラリー・ブティックのオープンを予定。リモージュ磁器界の革命児たちは、邁進を続ける。
● Non Sans Raison(店と工房)
5 Imp. d’Isly 87000 Limoges
日月休。火〜土10h-13h(土は11h-) /14h-19h
nonsansraison.com
Tél : 05.5510.9313
工房見学 :
火〜金の10h-12h/14h-16hの時間帯、所要時間30分。
48時間前に予約することをおすすめ。
リモージュ駅からは歩いて5分〜10分くらい。
ショッピングも楽しいリモージュ。
自分の懐に合うお気に入りを見つけたい。
Lachaniette
リモージュ磁器は高級品だから自分とは縁がないと思っていたが、リモージュに来てみて、必ずしもそうでもないと気がついた。窯元の工場直営店も多く、規格外製品を売る店もあってショッピングが楽しいのだ!
ひとつの磁器を完成させるまで、違った温度で何度も焼くなど、多数の製造工程が必要になる磁器には、その工程の数だけインシデントのリスクがあり、職人さんたちが細心の注意を払っても規格外製品が多く出る。
「ラシャニエット」では、リモージュの主要メーカーの通常製品だけでなく規格外(Second choix セカンドチョイス)のもの、またそれに同社オリジナルのデザインの装飾を手作業でほどこし、自社の窯で焼いたものを販売。それらの食器にはそれぞれ値段のシールが付いていて、カップで16€〜、マグ20€〜。大きめの皿でも15~25€ほど。ベルナルドーの無地のカップは通常57€のところ29€だった。
「難あり訳あり」商品とはいえ、素人の目には分からず、店員さんの説明でようやく気づくほど。また「難」を逆に生かしたデザインの皿などは職人さんのウィットが伝わってくるようで、完璧なものよりもかえって愛着が湧いてくるものだ。なかには日本の「金継ぎ」をデザインした模様のシリーズもあった。
リモージュの窯元で製造工程を見るなかで、検品のために棒で軽くたたいた時のピーンという音がしなければ検品でハネられたりして、規格外がどれだけ多くでるのかを知った。世界に名だたるリモージュならではだと思った。
Porcelaine Lachaniette
27 bd. Louis Blanc 87000 Limoges
Tél : 05.5534.5861
月〜土 :10h-12h/14h-19h
www.porcelainelachaniette.com
Ateliers & boutiques
絵付けの技、父から娘へ
ZESTE ELECTRIQUE
クレモンティーヌさんはファッションの仕事を離れ、故郷リモージュに戻って絵付け職人だった父親から絵付けを学び、工房併設のブティックをリモージュの中心にオープン。ドラム缶ほどの大きさの窯で、食器、アクセサリーなどを創って販売。店の一角ではお父さんが絵付けした、よりクラシックなコーヒーカップなどもあった。
12 rue Jules Guesde
Tél:07.8159.6803
zesteelectrique.com
クリエイターたちが共同で運営する店。
Le Bocal
磁器、七宝、ステンドグラス、革製品など小物とインテリア(写真の照明器具も磁器)の店。クリエイターたちが順番で店番。この日は七宝でアクセサリーを創る作家のデルフィーヌさん。
19 Bd Louis Blanc
Tél : 05.5533.8540
日月休、火〜土10h -13h/14h - 19h
www.galerie-lebocal.com
窯元直営店 (Magasins d’usine)。
一流ブランドの工場直営の店が多いのも、磁器の都ならではの楽しみです。
● ROYAL LIMOGES
54 rue Victor Duruy
月〜土 10h-18h Tél : 05.5533.2730
● BERNARDAUD
27 av. Albert Thomas Tel : 05.5510.2186
月〜土 : 9h30-18h30
● PORCELAINE ARQUIÉ(メイドインフランスの記事で近日掲載予定)
230 av. Baudin Tél : 05.5534.4052
月〜土:10h-18h