人々が家にこもるコロナ禍で会員数を増やす動画配信大手ネットフリックス。日本語字幕も選択できるなど在仏日本人にも便利な存在だ。我が家では高校生の娘が恋愛リアリティー番組『テラスハウス』を見ていたが、日本的な文化コードや若者言葉に触れられたのが良かったとか。
看板ドラマの筆頭といえば犯罪アクション『La Casa de Papel ペーパー・ハウス』。打ち切りが決定していたスペインのTVドラマをネトフリが再編集し、世界的ブームを巻き起こした。フランスでは2017年から配信が開始され、昨年は非英語圏ドラマとして世界最多視聴者数を獲得した。だが個人的に強烈な印象を受けたシリーズ作品なら、犯罪記録ドキュメンタリー『TigerKing タイガーキング:ブリーダーは虎より強者?!』。ネコ科動物園を運営する怪しい虎のブリーダーが登場するのだが、「事実は小説より奇なり」の展開に目が釘付けになった。他にも韓流ドラマ『Crash Landing on You 愛の不時着』や、『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼルら4人のシネアストが順に監督を務める『The Eddy ジ・エディ』などの話題作にも挑戦している。
一話完結モノとしては、ネットのインタラクティブ性を活かした『Black Mirror : Bandersnatch ブラック・ミラー: バンダースナッチ』が面白い。鑑賞者が登場人物の動きを決めるゲーム感覚の作品である。カルティエ財団が製作に絡むデヴィッド・リンチの短編『What Did Jack Do? ジャックは一体何をした?』、デンマークの巨匠ビレ・アウグストの『A Fortunate Man幸せな男、ペア』、有名黒人女性シンガーのドキュメンタリー『What Happened, Miss Simone? ニーナ・シモン~魂の歌』など、ネトフリ独占配信の秀作も見応えがある。
ネトフリは長らく「古典に興味なし」であったが、この4月からは戦略を変え、MK2と手を組み、トリュフォー、ドゥミ、チャップリンらの名作約50本が順次見られるように。またアニメも豊富で、現在はジブリ作品が鑑賞できる。『夜は短し歩けよ乙女』の鬼才・湯浅政明作品は、目も覚めるサイケな映像表現が魅力でアニメファン以外にもお勧めしたい。(瑞)