1978年、フランス東部ベルフォールにあるアルストム社の工場で高速列車TGV第1号が産声をあげた。愛称は「パトリック」と、初運転士の息子さんの名前がつけられた。パリ=リヨン間は、2時間40分から2時間の距離になり、81年2月には世界最速380km/hを記録した。営業運転開始は81年9月。この年選出されたミッテラン大統領もテレビカメラに囲まれ、営業最高時速260kmで疾走するフランスの最先端技術の賜物を試乗した(下にビデオ)。
それから38年経った昨年12月、この第一世代TGV109本がリタイアを迎え、長兄パトリックだけが仲間を代表してフランス全国の国鉄職員に別れを告げる挨拶ツアーに出た。パトリックは一般の鉄道ファンたちのためにもパリのリヨン駅やリヨンのぺラッシュ駅にお目見え。人々は懐かしいオレンジ色のTGVの操縦室やワゴンを見納めようと列を作った。
「81年、どうしても開通第一便に乗りたくて、開通2ヵ月前、予約開始と同時にモンパルナス駅でチケットを予約しました。152フランでした。開通前日にリヨン入り、当日は朝10時に初乗車!日曜日で、満席でした」と学生だった当時を語るフランソワさん。小さい頃から鉄道好きでフランス国鉄に入社。40年間で地球を335周するくらい走ったというパトリックを、見送った。(集)