目玉作品は野外に広がる巨大モニュメント「クロズリー・ファルバラ」(1971〜76)。1610m²の空間の中心には、氷山に似た「ヴィラ・ファルバラ」がそそり立つ。「本人の希望で生前は非公開でした。平穏を求めた彼の思索の場所です」とガイドさん。
よく見ると内部へと続く扉が。「キャビネ・ロゴロジック」という隠れスペースがあり、四方の壁に無数の生き物や物体が描かれた、想像力が刺激される部屋だ。デュビュッフェは「哲学的実践の部屋」と呼んだ。見学者の親子は、「これはテレビ、これは電子レンジかな?」と壁を指差している。70代になっても、こんなにも自由でスケールの大きな作品に挑んだ芸術家のエネルギーに圧倒された。
隣接するギャラリーには、絵画や彫刻、作品模型が並ぶ。彼は生涯で約1万2千作以上を制作したが、財団が所有するのは約三分の一ほど。初期の作品もあるが、ここでは「ウルループ」期(1962-74年)の作品が中心。つまり、クロズリー・ファルバラで見られる、太い輪郭を持つジグゾーパズル風の作品である。
そして、この時代を代表する実験的な作品が、作家本人が「絵画と演劇の中間、または絵画が延長された作品」と形容した「クク・バザール」。見学者は中二階から、一斉にこちらを向く175体の謎の生物に出会う。どこかユーモラスな彼らは、舞台に立つ俳優でもある。どこからかデュビュッフェが作曲した音楽も流れてくる。
別の部屋では、やはり氷の塊のような彫刻のベンチが備えてある。その上で、盛り沢山の作品鑑賞に疲れた子どもたちが寝そべっていた。近くには「ちゃんと見てってよ」と言いたげな、茶目っ気あふれるデュビュッフェの笑顔の写真が飾られる。人を楽しませ、本人も存分に楽しんだ豪快な芸術家人生だ。(瑞)
Fondation Dubuffet(Périgny-sur-Yerres)
Adresse : Rue du Moulin-Neuf Sente des Vaux Ruelle aux Chevaux , 94520 Périgny-sur-YerresURL : http://www.dubuffetfondation.com/fondation.php?menu=151&lang=fr