ナント三大陸映画祭に行こう!
フランス西部に位置するナントは、ロワール地方最大の港湾都市。活気溢れる文化都市として、国内外から多くの観光客を惹きつける。とりわけ映画ファンには、アジア、アフリカ、ラテン・アメリカの秀作を紹介し続けるナント三大陸映画祭で知名度が高い。本映画祭のシンボルマーク「青い気球」は、冒険小説の始祖でナント出身の作家ジュール・ヴェルヌへのオマージュが隠れているが、実際1979年以来、ヴェルヌに負けぬ冒険心で遠い異国の才能を発掘してきた映画祭なのだ。
アッバス・キアロスタミ(イラン)、ホウ・シャオシェン(台湾)、アピチャッポン・ウィーラセータクン(タイ)、ジャ・ジャンクー(中国)、スレイマン・シセ(マリ)と、これまで見出してきた才能は数知れず。彼らはのちにカンヌ、ベルリン、ヴェネチアといった重要な国際映画祭で受賞した一流監督だ。日本人監督との関係も深く、過去には高嶺剛『ウンタマギルー』、是枝裕和『ワンダフルライフ』、富田克也『サウダーヂ』、深田晃司『ほとりの朔子』が最高賞を受賞。昨年は濱口竜介監督の『ハッピーアワー』が銀賞を受賞している。
38回目を数える今年は11月22日から29日まで開催。コンペティション部門にはフィクション、ドキュメンタリーを問わず国内プレミアの10作品が上映予定だ。コンペに今年も日本の作品が登場する可能性は濃厚だろう。また毎年ひとつの国にスポットライトを当てた特集上映を実施するが、今年はアジアが誇る映画大国「インド」に決まった。歌と踊りが満載のボリウッド映画上映で盛り上がりそうだが、本映画祭のことだからボリウッド以外のインド映画の奥深さも伝えてくれるはず。映画史に重要な役割を果たした監督の仕事を紹介するレトロスペクティブ部門には、香港映画の黄金期を駆け抜けたリー・ハンシャンと、カンボジア大虐殺の記憶をフィルムに刻み続けるリティ・パニュの作品を上映する。
本映画祭は一般の映画ファンと映画のプロを同時に満足させられるバランスの良さも自慢。公式上映後で深い討論が期待できるほか、その気になれば街中や会場で直接映画関係者に感想を伝えたり質問ができる。このアットホームで風通しのよい雰囲気を愛する熱心な常連客も多い。例えば筆者が会ったのは、全員が20年以上通い続ける60歳代の4人組。大手電話通信会社の元同僚同士という彼らは、毎年遠方から列車に乗りナントで映画巡礼をするのが楽しみなのだとか。
さらにナントといえば『シェルブールの雨傘』で知られるジャック・ドゥミ監督が、幼少から青春時代までを過ごした場所。彼ゆかりの場所やロケ地は映画祭の場所からも目と鼻の先だ。そもそもドゥミも通った老舗映画館カトルザが本映画祭のメイン会場である。それにナントは都市型遊園地Les Machines de l’Ile Nantes、文化複合施設Le Lieu Unique(地下にはハマムも!)など観光名所にあふれているから、映画の合間も退屈知らずの時間を約束。映画好きならぜひ一度はナント三大陸映画祭に足を運んではいかがだろう。
Le Festival des trois continents
2016年11月22~29日
映画祭パス65€/割引50€、10回券 45€ / 割引40€、一回券6€ /割引5€
http://www.3continents.com/fr/
第38回ナント三大陸映画祭ポスター。
今年はインドにスポットを当てる。