1987年に造船所が閉鎖され、一度は活気を失った港町ナント。だが89年に現外相のジャン=マルク・エロー が市長になると、文化を介した〈攻めの町おこし〉が始まった。クラシック音楽の祭典La Folle Journée、現代アート祭Estuaire、文化複合施設Le Lieu Unique、都市型遊園地Les Machines de l’Ileなどの成功で、80年代に「眠り姫」と称された町は、今や海外からも注目を浴びる華やかな文化都市に生まれ変わった。
少ない紙面で文化都市ナントの全貌は伝えきれないが、今月末に《ナント三大陸映画祭》が開催されるのを機にナントと映画の関係をたどってみた。本映画祭はアジア、アフリカ、南米の秀作を紹介し続けて今年で38年目を数える。
また、ナントはジャック・ドゥミ監督ゆかりの地でもある。彼の作品に思いを馳せつつ波止場を歩くと、謎の軍艦の上でカモメが仲良く羽を休めていた。この船は博物館船ル・マイエ・ブレゼ。聞けば『インセプション』で名高いハリウッドの鬼才クリストファー・ノーランの新作『ダンケルク』の撮影に参加した“スター船”だとか。やっぱりナントと映画は切り離せない関係なのだ。 (瑞)
取材・文・写真 林瑞絵